研究課題/領域番号 |
22KK0167
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
森本 昭彦 愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 教授 (80301323)
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研究分担者 |
三野 義尚 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 助教 (20362303)
北辻 さほ 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産技術研究所(廿日市), 主任研究員 (30638713)
LUANG・ON JUTARAK 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球環境部門(地球表層システム研究センター), ポストドクトラル研究員 (40968690)
多田 邦尚 香川大学, 農学部, 教授 (80207042)
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研究期間 (年度) |
2022-10-07 – 2025-03-31
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キーワード | ヤコウチュウ / 貧酸素水塊 / 北部タイランド湾 / 赤潮 |
研究実績の概要 |
北部タイランド湾の貧酸素水塊の分布、緑ヤコウチュウの空間分布、水中の栄養塩濃度、および堆積物からの栄養塩溶出量を把握するため、湾全体をカバーする16の観測点において2023年5月、8月、10月、2024年3月にカセサート大学調査船カセサートⅠにより船舶観測を実施した。2023年度は8月、10月の観測時に緑ヤコウチュウが観測され、10月には3000 cell/L以上の極めて高い密度で緑ヤコウチュウが分布していた。貧酸素水塊は5,8,3月の観測ではほとんど見られなかったが、10月の観測では湾北西海域で形成されており、最も西側の観測点ではほぼ無酸素であった。 また、船舶観測時には人工衛星データから緑ヤコウチュウ分布を把握するアルゴリズム開発に必要なデータも取得した。このデータを使い開発したアルゴリズムにより、各月毎の緑ヤコウチュウの空間分布を得ることができた。 緑ヤコウチュウ赤潮が北部タイランド湾の貧酸素水塊の形成にどのように関わっているかを調べるため、2023年6–7月に北部タイランド湾北東部の係留施設において約3日間のセジメントトラップ実験を3回(M1-M3)実施した。平均粒子沈降フラックスはM3実験で最も高く、M3トラップ粒子を用いた暗培養実験で最も大きな酸素消費が見られた。この大きな粒子沈降および高い有機物分解性は、M3トラップ投入時に観測した緑夜光虫ブルームと密接に関わっていると推察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画していた4回の船舶観測を予定通り実施でき、必要なデータを取得することができた。人工衛星データ解析では、緑ヤコウチュウ赤潮を検出できるアルゴリズムを完成させることができ、緑ヤコウチュウ赤潮の空間分布の時間変化を捉えることに成功した。 数値モデルに関しては、ベースとなる物理モデルと低次生態系モデルの準備は整い、緑ヤコウチュウを変数として組み込むための文献調査も完了した。 以上のことから順調に研究は進展している。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は大規模な緑ヤコウチュウ赤潮が発生した。この赤潮を数値モデルにより再現するためには、緑ヤコウチュウの増殖を数式化する必要がある。文献調査から緑ヤコウチュウの増殖速度は分かったが、その値では2023年度に観測されたような赤潮状態を再現することができないと見積もられた。このことから、緑ヤコウチュウが赤潮を形成するときには、何か大きな生態的な変化が起こり、増殖速度が急激に増加するのではないかとの仮説を立てた。この仮説を検証するため、2024年度には観測定点を設定し、その定点において数日毎にサンプリングを実施し、緑ヤコウチュウのセルサイズや共生藻の濃度、環境場の変化を連続的に記録する。
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次年度使用額が生じた理由 |
緑ヤコウチュウ赤潮発生時の生態的な特徴の変化を捉えるための観測を2024年度に実施することになったことから、2023年度使用予定であった旅費や物品購入をできるだけ控え2024年度の観測費用とした。 この費用を旅費、物品費とし2024年6月下旬~9月上旬まで連続観測を実施する。
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