研究課題/領域番号 |
22KK0169
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
北川 尚美 東北大学, 工学研究科, 教授 (00261503)
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研究分担者 |
兼松 祐一郎 東京大学, 総括プロジェクト機構, 特任講師 (00839714)
菊池 康紀 東京大学, 未来ビジョン研究センター, 准教授 (70545649)
廣森 浩祐 東北大学, 工学研究科, 助教 (80828062)
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研究期間 (年度) |
2022-10-07 – 2025-03-31
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キーワード | パーム産業 / 資源循環 / ライフサイクルアセスメント / マルチ生産プロセス |
研究実績の概要 |
本研究では、パーム産業の製油工場を対象とし、代表者らの廃棄油の資源化技術を導入することで、製造される素材やエステルの量や品質、実質的な資源増加量(循環率)を明らかにする。また、現地工場の実態調査と資源化試験や品質評価に基づき、経済性と環境適合性の評価を行い、各工場に適した生産プロセスの設計とマネジメントの方法論を確立する。その際、インドネシアやマレーシアの大学や企業の研究室において、新技術で製造される素材やエステルの量や品質の評価を行い、技術の理解醸成と現地で実施できる品質評価法を確立する。また、現地工場の実態を把握し、設備の状況や製造要件、技術力、法令などを踏まえ、持続的に稼働できる生産プロセスの設計とそのマネジメント法を共に創り出す。 本年度は、2022年12月1-7日に、代表者と分担者2名でインドネシアを訪問し、インドネシア大学の研究協力者の支援下で、政府機関やパーム企業を訪問し、技術紹介、聞き取り調査、研究の打合せを実施した。そして、製油工場で最も多く発生する廃棄油(脱臭留出物)のサンプル提供を依頼し、日本で成分分析を行い、データベース化を進めている。また、2023年2月16-19日に、代表者と分担者1名でマレーシアを訪問し、政府機関、フードテック関係の企業やベンチャーが参加するイベントと学会に参加し、技術紹介と聞き取り調査を行った。また、2023年3月15-17日に日本で行われた化学工学会国際シンポジウムの招待講演のために、ノッティンガム大学マレーシアの研究協力者グループが来日した。その際、技術紹介と研究打合わせを実施、The IChemE’s Palm Oil Processing Special Interest Groupというパーム油産業に関連する技術移転や好事例紹介等の共有を目的とするフォーラムで技術紹介を行うことでより広く活動を展開させることとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は、採択後の期間が半年程度と短いため、目的とする2ヵ国に渡航する日程を確保するのが非常に難しかったが、何とかインドネシアとマレーシアの両国に直接出向いて現地調査や研究打合わせを実施することができた。「百聞は一見に如かず」ということわざ通り、全ての物事においてそれを実感するばかりであった。インドネシアでの実際のパーム油の流通状況、サプリメントの需要の著しい伸び、バイオディーゼル導入率がずば抜けて高い理由、現地目線での製油工場での課題や将来構想、日本からの技術移転に対する政府の支援体制など、期待する以上の情報や知見、データを得ることができた。また、インドネシアとマレーシアのパーム産業のコンセプトの違い、その背景の社会情勢の違いなど、現地に出向くことで明確になる因果関係も数多くあった。国際共同研究強化(B)の意義を実感させて頂いた貴重な初年度であり、順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
次年度も、インドネシアとマレーシアの両国に各1週間程度渡航する予定である。インドネシアに関しては、本年度訪問したパーム企業の廃棄油の機能性成分が製油工場によって大きく変動していたことから、その要因の調査を実施すると共に、他の企業の廃棄油の組成データの入手を進める。また、現地で所有している分析装置を確認し、どのような分析が可能かについて議論する。マレーシアについては、既に機能性成分回収を既存法で実施している企業もあるため、それも踏まえて協力企業を選定、必要に応じて秘密保持契約などを結び、サンプル提供とその分析から進めていく予定である。また、日本で開催する国際会議において協力研究者に招待講演を依頼、実際に代表者が有する装置や分析機器を確認しつつ打ち合わせを行い、さらに研究の推進を図っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
博士・修士論文、卒業論文等の時期に重なり、マレーシアへの渡航期間が2名と予定よりも人数が少なく、また期間も短くなったために、次年度使用額が生じてしまった。 翌年度分として請求した助成金と合わせた使用計画としては、9月に開催される国際会議の招待講演および代表者の研究室での研究打合わせなどに、協力研究者を招聘するために使用する予定である。
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