研究課題/領域番号 |
22KK0171
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
佐澤 和人 富山大学, 学術研究部理学系, 助教 (80727016)
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研究分担者 |
佐々木 隆浩 北海道医療大学, 薬学部, 講師 (20714489)
細木 藍 富山大学, 学術研究部理学系, 特命助教 (30748835)
斎藤 健 北海道大学, 保健科学研究院, 客員研究員 (40153811)
倉光 英樹 富山大学, 学術研究部理学系, 教授 (70397165)
藏崎 正明 北海道大学, 地球環境科学研究院, 客員研究員 (80161727)
三原 義広 北海道科学大学, 薬学部, 講師 (90733949)
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研究期間 (年度) |
2022-10-07 – 2025-03-31
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キーワード | 森林火災 / 泥炭火災 / 煙霧 / 酸化促進物質 / 生態毒性 |
研究実績の概要 |
本国際共同研究は、「インドネシア共和国における森林火災時に泥炭層から発生する煙霧粒子内の水溶性成分の化学的特性と生態リスク、および、その原因物質の特定」を研究目的とし、インドネシアの研究員協力のもと行うフィールド調査、および、日本国内における室内実験から解明することを目指す。本研究では「泥炭地における火入れ実験」、「現地で発生しているヘイズの捕集と河川水質のモニタリング」、「実験室内における泥炭の加熱実験」を実施し、これらの実験により得られた煙霧粒子を分析する。 本年度は主に「実験室内における泥炭の加熱実験」について研究を遂行した。インドネシア共和国で採取した未火災地の泥炭を管状炉内において、標準空気または窒素ガスを流し、加熱した。各温度での加熱後にフィルターを交換し、異なる温度で発生した煙霧粒子を捕集した。煙霧粒子を捕集したフィルターを超純水に浸漬し、30分間超音波を照射することで水溶性成分(WSM)抽出した。 各加熱温度で燃焼した際に排出される煙霧粒子量を排出係数(EF:mg/g)として算出した。EFは標準空気下では300 ℃,窒素ガス下では400 ℃の時に最も高く、それぞれ63.1,162.5 mg/g だった。各加熱温度(300~600 ℃)で算出したEFを合算した値は、窒素ガス下では375.4 mg/gと標準空気下よりも5.1倍高かった。以上の結果から、泥炭はくん焼することでより多くの煙霧粒子を発生することがわかった。WSMのDOC濃度は、37.9~341.6 mg/Lであり、捕集された煙霧粒子量と正の相関関係がみられた。WSM中の金属はAl、Fe、Znで主に構成されていた。WSMの酸化能をジチオトレイトール(DTT)アッセイとアスコルビン酸(AA)アッセイから評価した。その結果、AAはZn濃度と、DTTはMn、Pb濃度と有意な相関を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験室内における泥炭の加熱実験を行い、加熱条件の違いによる酸化能を明らかにし、その原因物質が特定の重金属であることを示すことができたため。
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今後の研究の推進方策 |
共同研究者および大学院生とともにインドネシア共和国カリマンタン島に渡航し、パランカラヤに約2週間滞在する。渡航時期は泥炭火災が発生する8月下旬から9月を予定する。現地滞在中は大気粒子の捕集を日中、夜間にハイボリウムエアサンプラーによって行う。また、森林火災の発生が確認できた際はヘイズの捕集を同様に行う。加えて、パランカラヤ市内を流れる主要河川で水試料を採取し、化学分析と毒性試験を行う。 未火災地の泥炭を採取し、日本国内に輸送する。環状炉に通した石英管内で大気および窒素ガス雰囲気下で温度を変えて土壌試料を加熱する。発生した煙霧粒子を孔径の異なるガラス繊維ろ紙で一定時間捕集し、化学分析と毒性試験を行う。大気粒子、煙霧粒子より水溶性成分を抽出する。抽出は純水やフミン酸、河川水を用いて行う。煙霧粒子の水溶性画分について溶存有機炭素濃度(DOC)、蛍光特性を評価する。また、アスコルビン酸アッセイ、ジチオトレイトールアッセイより酸化力と活性酸素産生能について明らかにする。水溶性成分に含まれる重金属濃度をICP-MSで、PAHsとその誘導体、特に酸化促進物質として知られるキノン体PAHsについてGC/MSとLC LC-MS/MSで定性・定量する。大気粒子、煙霧粒子の水抽出成分の毒性についてPC12細胞、植物プランクトンを用いた蛍光染色法を用い、細胞膜損傷の有無、細胞内の呼吸と活性酸素種(ROS)局在を蛍光顕微鏡から観察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
外注で依頼している元素分析等の費用がどれぐらい必要が不確定であったため、予算額を繰り越すことにした。また、次年度計画しているインドネシアへの渡航について、現在海外渡航費が高騰していることから、必要な渡航費と現地での調査費用を確保するために繰り越しすることにした。
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