研究課題
申請者は、基課題での動物を用いた解析で、母親の妊娠期栄養摂取状況による産仔のメチル化異常と、それに伴う発現変化が認められる遺伝子を9 個同定し、それらが肥満感受性の最上流エピゲノム異常である可能性を証明した。しかし、基課題によって得られた研究成果を社会問題解決のために具体的に展開するには、動物を用いた実験的アプローチのみでは障壁があり、国際共同研究にて、母体の栄養(因)と仔の疾患発症素因(果)の因果関係につい て、疫学研究(世界で最も肥満・代謝性疾患に注力しているシンガポールの出生コホート調査)を取り入れることで、生物学的実験と疫学研究との統合的理解を進め、肥満感受性を決定する経世代エピゲノム変化の同定と検証を行い、肥満最上流素因を定義することを目標として、研究を遂行している。R5年度には、2024年2月より、シンガポール国立大学にて疫学解析を開始した。GUSTO(Growing up in Singapore towards Healthy Outcomes)および S-PRESTO(Singapore Preconception Study of Long-Term Maternal and Child Outcome)の出生コホートデータを用いて、Prof. Johan Gunnar Erikssonの助言の下、妊娠母体および周産期の栄養素摂取状況とその産子代謝パラメータについて、データ抽出の後、解析を進め、肥満・肥満症素因形成の世代間継承について検証を行っている。
2: おおむね順調に進展している
基課題の進捗で当初の渡航期間を若干変更したが、現在順調に解析が進められている。
引き続き、 申請者が専門とする生化学・分子生物学実験の技術やデータを疫学研究データと融合・検証することによって、妊娠母体が摂取する栄養素が制御する経世代エピゲノムを動物レベルのみならずヒトにおいても実証し、新たな肥満・肥満症の病因論、治療戦略の可能性を提示する。
すべて 2024 2023
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
Current Oral Health Reports
巻: 10 ページ: 69~74
10.1007/s40496-023-00338-z