研究実績の概要 |
正常妊娠初期(n=4)・正常妊娠後期(n=3)・妊娠高血圧腎症(PE)(n=3)の子宮内膜CD4+T細胞(エフェクター型ヘルパーT細胞、メモリーCD4+T細胞、制御性T細胞(Treg)を含む)をシングルセルトランスクリプトーム解析に供した結果、正常妊娠後期に比較し、PEでは、Tregに疲弊分子(PD-1等)の発現が増強する一方、メモリーT細胞とエフェクター型CD4+T細胞の一部で活性化マーカー・拒絶反応関連遺伝子の発現増強を認めた(Tsuda S., et al, Frontiers in Immunology, 2024)。 絨毛外栄養膜細胞(EVT)からの補助刺激とT細胞分化の関係ならびPEにおける変化をシングルセルトランスクリプトーム解析にて明らかにするため、サンプルの取得を行った。ホルマリン固定パラフィン包埋サンプルからのシングルセル遺伝子発現解析Flexを用いることとした。正常妊娠後期23例、PE9例の胎盤をホルマリン固定した。また、T細胞のエピゲノム解析を行うため、単一核解析用の末梢血リンパ球凍結を1例のPE症例から行った。 EVTとT細胞の共培養系の確立のため、EVT cell lineの作成を行った。正常妊娠3例、PE1例からcell lineの確立に成功した。EVT cell lineとprimary EVTの補助刺激分子ならびに遺伝子発現の比較を行うため、両者のフローサイトメトリーと前者のシングルセルトランスクリプトーム解析を行った。フローサイトメトリーでは、両者における補助刺激分子発現は概ね類似していることが明らかとなった。トランスクリプトーム解析は、今後公開データベース上のprimary EVTのデータとin houseデータを比較する予定である。また、EVT cell lineと末梢血リンパ球の共培養の予備実験にて、培養条件の最適化を行っている。
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