研究課題/領域番号 |
23000004
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
常深 博 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (90116062)
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研究分担者 |
國枝 秀世 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (00126856)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 宇宙科学 / 宇宙物理 / X線天文学 / 人工衛星 / 宇宙線 / SDCCD / X線望遠鏡 |
研究実績の概要 |
我々の狙っている小型科学衛星FFASTでは検出器としてSDCCDを使用するが、この基本的な構造はASTRO-Hに搭載するX線CCDと同じである。SDCCDではこれを基に薄いシンチレータを貼り付け、高エネルギー側に感度を伸ばす。X線CCDの製造において、浜松ホトニクスの製造過程で問題が発覚した。素子へのボンディング不良である。この問題はボンディングのやり方やボンディングの場所を変更することで衛星搭載に求められる規格を満足させることができたが、それに至るまでには数度のやり直しがあり、素子の完成は平成25年度にずれ込んでしまった。しかし、X線CCDは当初見込んだ性能を持っていることを確認した。これを動作させる周辺回路の開発は別途進め、平成24年度内にスクリーニングシステムとして完成させた。衛星搭載品と同等な素子を用いて性能試験やX線に対する応答を調べ、所定の性能を発揮することを確認した。衛星搭載のためにクリーンルーム内での作業を確立し、安全に素子の搭載や交換をできるようにした。二個の素子を搭載するのに半日、全交換するのに一日で完了する。冷凍機に関して、搭載品と同等の機械インターフェースを持つ小型冷凍機を使用できるようにし、簡単に性能試験ができるようにした。信号処理のためのアナログASICの開発も順調に進んだ。さらに、このASICの放射線耐性を調べ、衛星仕様を満足することを確認した。X線望遠鏡はASTRO-Hに搭載されるスーパーミラーとほぼ同じであるが、できるだけ有効面積Sと立体角Ωの積を大きくする必要がある。そのデザインを進め、構造的にはほぼ同じであるが、ミラーの位置を調整することにより、軽量化を達成できることを確認した。 小型科学衛星計画に関して、JAXAの工学部門と協力して、各種アンケートに対応した。また、FFASTをサポートする小型衛星計画として工学実証ミッションFRONTの計画にも協力してその検討を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
SDCCDの製造が遅れたことは想定外であった。この原因を解明し、所定の製造に進むために一年近くの遅れとなった。そのために周辺回路の整備を完了したにもかかわらず、最終的なチェックが遅れた。しかし、実際のスクリーニングシステムの読出し雑音は5e-程度、X線CCDを組み合わせた場合のエネルギー分解能は150-200eVFWHM(@5.9keV)であることから、必要な精度を達成したと判断している。浜松ホトニクスから納入された素子は、ASTRO-Hに搭載のものに引き続いて製造されたSDCCDで、これらはまとめて性能試験を進め、スクリーニングをした。いずれも所定の性能を満足していることを確認している。 また、冷凍機に関しても非搭載品ではあるが、小型のカメラシステムを簡便に冷却できるようになったので、実験の能率が上がった。信号処理にはアナログASICを採用し、軽量化、低消費電力化する必要がある。大阪府大でのガンマ線照射試験や放医研での重粒子線照射試験、さらには温度サイクルをかけた試験などにより、衛星搭載仕様を十分に満足することを確認した。これにより電子回路の一定の目途がついた。クリーンルーム内でのX線CCD素子搭載手順もほぼ確定できた。これにより、複数の素子をできる限り稠密に搭載し、再現性良く固定する手法を確立した。また、素子を冷却する前に必要で可能なベーキングの条件、さらに汚染のないことを確認する方法も確立した。小型科学衛星を念頭に置いた場合、できる限りの軽量化が必要である。望遠鏡はASTRO-Hに搭載するものと同じ構造で、ハウジングを含め82㎏となっていた。しかし、ミラーの位置を微調整し、SΩを大きくする方法が判り、14㎏程度軽量化できる見込みができた。これにより、必要な反射板の数を減らすことができるので製造期間を短縮することが可能になる。以上の状況を考えると、ボンディングによる遅れはあったものの、かなり取り戻すことができたと判断している。
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今後の研究の推進方策 |
SDCCD製造に関しては、遅れがあったものの、3個入手できた。特に性能上の問題はないので、いずれも搭載予定品とする。これを搭載するカメラシステムの構造はASTRO-Hに搭載するものと同じにし、機械環境試験はすべてそちらのデータを利用することにより、試験手順や時間の節約を図ることにする。そのためには、素子の搭載方法を当初想定していたものから変更する必要があるが、むしろFFASTにとっては簡単になる方向になる。これでほぼ遅れは取り戻せると考えている。ただし、ASTRO-Hそのものはいろいろな理由で遅れ気味であり、当初の打ち上げ予定もずれ込んでいる。また、JAXAのアンケート対応を通じて判ったことであるが、小型科学衛星計画そのものも大きな見直しがあるようで、それに対応して計画を修正する必要がある。具体には、小型科学衛星に対する予算規模を明確に制限し、これにフィットする計画となっているかどうかがキィになる。我々の観測目的を念頭に置いて、制限を満足するように計画全体を修正していく。これらは今後の状況に応じて臨機応変に対応できると考えている。望遠鏡の製造に関して、機械構造そのものはASTRO-Hに搭載する同じであるが、反射板の位置を微調することにより、軽量化と枚数削減に伴い製造期間を十分に確保することができるようにする。
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