研究課題/領域番号 |
23000004
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
常深 博 大阪大学, 理学研究科, 教授 (90116062)
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研究分担者 |
國枝 秀世 名古屋大学, 理学研究科, 教授 (00126856)
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研究期間 (年度) |
2011-05-31 – 2016-03-31
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キーワード | 宇宙科学 / 宇宙物理 / X線天文学 / 人工衛星 / 宇宙線 / SDCCD / X線望遠鏡 |
研究実績の概要 |
FFAST用のX線検出器HXCはASTRO-H搭載のSXIを基本とし、使用する素子をNeXT4からSDCCDに変更したものである。SDCCDはシンチレータをCCDに直接貼り付けた素子で、必要な個数を揃え、カメラとして組上げた。各種の環境試験はSXI単体レベルで合格することを確認できた。素子の動作温度がSXIの-110℃に対して、HXCは-60℃であり、冷却に付随する試験なども正常に終了した。信号処理回路は、SXIの設計寿命よりも短く、軌道上で1年程度を見込んでいるために、それを満足するパーツで製作を進めた。各種動作試験はもとより、サブシステムとしての環境試験も終了した。 FFAST用硬X線望遠鏡は、円周方向に3分割された構造をしている。2014年度は、1/3周分の組み上げを行った。1/3周分に対して反射鏡フォイルをハウジングに詰め、2014年12月にSPring-8 BL20B2にてX線照射実験を行い、焦点像を見ながら反射鏡フォイル位置を調整する光学調整を行った。その後、性能評価実験を行い、30keVのX線に対して角度分解能1.7分角、有効面積65cm2であった。これらは、FFASTの要求性能を満たす値である。 ASTRO-H衛星の準備が遅れており2015年度に打ち上げ予定になったため、FFASTの準備もそれに従って遅れざるを得ない。FFASTの狙う小型科学衛星計画もいろいろと見直しが起こった。予算面はともかくも、5年で3機の予定は2年毎に1機となった。この小型科学衛星3号機を目指して応募したものの、採択には至らなかったため、この次を狙う予定である。この時の応募においては、JAXAの工学部門とともに三菱重工の協力を得ている。今後も編隊飛行を念頭に置いた計画として工学グループとの協力の基に進めていくことを確認している。 現有の衛星を使ってX線観測を行い、成果を挙げることにより、FFASTなど将来の衛星を使った観測検討を進めた。MAXI/SSCやすざくではHXCの開発につながったX線CCDカメラが活躍しており、活動銀河核や銀河団、超新星残骸などの研究を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
FFAST衛星計画は小型科学衛星での実現を目指している。衛星計画を効率よく進めるために、中型科学衛星ASTRO-Hでの開発資産を上手く利用する予定であり、それを前提に進めている。しかし、ASTRO-H衛星計画は遅れが発生しており、現状の打上げ予定は2015年度と二年程度の遅れとなっている。そのためにその分だけFFAST衛星で必要な観測装置や望遠鏡の開発は遅れている。HXCの開発はおおむね完了し、ASTRO-HのSXIの軌道上での動作を確認すれば、完璧となる状態である。 FFAST用硬望遠鏡製作の一番の懸念は、形状・表面粗度において良質の多層膜反射鏡フォイルの大量生産であった。このフォイルの製造は順調に進み、それらを使用して組み立てた1/3周分は、十分に要求性能を満たしていることがわかった。これにより、フォイルの質は問題ないことがわかったので、後は組み上げを行えば良いということになり、今年度中の望遠鏡の完成の目処がたった。 FFASTの準備は予定よりも遅れているものの、小型科学衛星3号機を目指して応募した。しかし、今回は採択には至らなかったため、次を狙う予定である。この応募では、JAXAの工学部門とともに三菱重工の全面的な協力を得たが、今後も編隊飛行を伴うFFAST計画に協力して進めることを確認した。小型科学衛星計画以外にも、工学ミッションを主として理学観測としてFFASTを実現する道など、広く可能性を追求する。
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今後の研究の推進方策 |
JAXA内で小型科学衛星に関する計画変更があり、当初想定していたよりも、低コスト化を強く求められるようになった。FFASTはASTRO-H搭載機器の開発を基礎に置いた衛星計画ではあるが、低軌道地球周回衛星であり、長期間の観測を狙う必要もない。そこで、二機の衛星からなるとはいうものの、低コストを念頭に置いて、JAXAの工学部門と三菱重工の協力のもとに、3号機への応募をしたが不採択であった。それを受け、以下の対策を進める。 ASTRO-Hの計画に従ってFFAST搭載機器を完成させる。FFAST搭載機器は、ASTRO-H搭載のCCDカメラとスーパーミラーとをベースに開発しているので、その総合試験あるいは軌道上での動作を確認すれば、開発は完了する。そのために、今後のASTRO-H衛星の総合試験で出てくるであろう各種問題点を克服できるようにする。衛星のバスシステムについては、三菱重工の協力を基に更なる低コスト化を検討する。FFASTでは二機の衛星を必要とすることから、機器の共通化を一層進める。この点については、工学部門との関連からの要請もあり、それを取り込んでいく。科学目標については、より一層丁寧に説明するしかない。つまり、AGNの進化においてはダウンサイジングが指摘されており、その不思議を解明するためにいろいろな強度のAGNの分布を調べる必要がある。これは単独の観測装置では実行しきれないものであり、その一翼を担うのがFFASTである。これをさらに発展した観測が可能な計画を検討し、必要に応じて見直し、さらに将来のAthena計画などロードマップにつながるようにする。工学的には編隊飛行を推進するJAXA内グループと連携し、FFAST計画に必要で最小限のスペックとする検討を進める。 硬X線撮像装置HXCに関して、以下のように進める。HXCはASTRO-Hに搭載しているX線カメラSXIの構造をそのまま利用するものである。X線CCD素子はNeXT4からSDCCDに変更しているカメラで、サブシステムとして完成している。HXCの動作試験も単体で可能な範囲は終了し、ASTRO-H衛星搭載上でのSXIの動作確認を待つだけである。SXIとHSCとで一番異なる点は、観測モードであったが、これも観測モード制御のFPGAプログラムで対応できるように改修し、その動作も確認している。 硬X線望遠鏡に関して、ハウジング内のフォイル位置を固定するアラインメントバーをFFASTに合わせて製作している。またSPring-8 2015年A期に対してビームタイムを申請し、採択されている。そこで2015年6月から7月にかけてX線照射実験を行い、1/3周分の組み上げと性能評価を行う。さらにSPring-8 2015年B期に対してビームタイム申請を行い、最後の1/3周分の組み上げを行う予定である。これにより、ASTRO-Hが軌道に載る前にX線望遠鏡を完成させる予定である。もしも2015年B期のビームタイムが認められなかった場合は、名古屋大学Ux研、もしくは宇宙科学研究所にある可視光平行光システムにおいて、光学調整を行う。
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