研究課題/領域番号 |
23000006
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
鈴木 啓介 東京工業大学, 理工学研究科, 教授 (90162940)
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研究分担者 |
楠見 武徳 東京工業大学, 理工学研究科, その他 (70015882)
大森 建 東京工業大学, 理工学研究科, 准教授 (50282819)
高橋 治子 東京工業大学, 男女共同参画センター, 助教 (40297601)
安藤 吉勇 東京工業大学, 理工学研究科, 助教 (40532742)
瀧川 紘 東京工業大学, 理工学研究科, 助教 (70550755)
松本 隆司 東京薬科大学, 薬学部, 准教授 (70212222)
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キーワード | 酸化 / 複合糖質 / 多環芳香族化合物 / ポリフェノール / ポリケチド / 全合成 / 天然有機化合物 |
研究概要 |
本研究課題の立ち上げにあたる本年度の研究においては、複合糖質、ポリケチド、ビアリール系芳香族化合物およびポリフェノール類を中心とする高度に酸素官能化された天然有機物の合成を可能とする基礎的方法論の開拓を行った。また、それを活かした天然物の全合成研究も実施した。以下に具体的な成果を示す。 1)芳香族化合物の合成研究:酵素触媒を利用した不斉非対称化反応により,アキラルなビフェニル化合物から光学活性な軸不斉ビフェニル化合物を高エナンチオ選択的に合成するための合成手法を見いだした。また,本手法により得られる各種のビフェニル化合物を用い,実際にアントラキノン骨格とキサントン骨格とがビアリール型に結合した複合型天然物、euxanmodin Bの合成研究を行い、そのラセミ体の合成に成功した。2)多環性ポリケチド類の合成研究:ビスアントラキノン型抗生物質BE-43472Bの主骨格の構築に成功した。3)複合糖質の合成:ビス-C-グリコシド結合を持つ抗腫瘍性天然物の合成を指向し、三環性化合物を糖受容体として利用するビス-C-グリコシド合成法を開発した。さらにそれを用いると、天然物の中心骨格を効率よく合成できることを見出した。この知見を基に、側鎖の導入とピラノン環の構築、酸化度の調整を順に行い、サプトマイシンBの初の全合成を達成した。4)ポリフェノール類の合成:フルオロベンゼン誘導体を用いたエピカテキン類の自在合成法を確立した。また、オリゴマー化の様式については、フラバンユニットの8位をハロキャッピングする独自の方法を見出し、カテキンユニットの効率的なオリゴマー化方法を見出した。5)高次構造天然物の構造解析:高分解能NMRを用いることにより、カテキンオリゴマーのような構造が複雑な化合物の構造解析を行った。これによりオリゴマーの配座に関するいくつかの興味深い知見が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
立ち上げにあたる本年度の研究を終えたが、研究はおおむね順調に進展しているといえる。その中で、糖脂質の合成研究においては、合成経路の大幅な短縮につながりうる有用な知見が得られた。そこで、年度開始時の研究計画を一部見直し、23年度の経費として計上していた一部の予算を24年度の4月以降も使用できるよう手続きを行った(24年度9月30日完了)。そのうえで、当研究課題について集中的に検討を行った結果、目的化合物の初の全合成を完遂することができた。 その他の研究課題については、直面する個々の課題解決に注力し、それぞれ成果を収めている。具体的には、以下のとおりである。 1)ポリフェノール化合物の合成研究:困難とされるエピカテキン類の合成に関し、1,3,5-トリフルオロベンゼンを出発化合物として用いるあらたな新手法を見出し、その有効性を確認した。これにより、各種カテキンオリゴマーの合成に必要なモノマーを、さらに効率的良く供給することができるようになった。2)複合糖質の合成研究:二つのアミノC-グリコシドを有するプルラマイシン類の合成研究において、母核となる三環性骨格を再設計し、それをビス-C-グリコシド化反応に供したところ、期待以上の好結果が得られた。また、本化合物の合成の途上遭遇した予期せぬ副反応のひとつは、光照射下で進行することが明らかとなった。この結果は、あらたな方法論開拓への展開が期待されている。3)多環性化合物の合成研究:イソオキサゾールを利用した合成単位の連結法、転位反応に基づく核間置換基の立体特異的導入法などを詳細に検討し、比較的共通性の高い多官能性ポリケチド合成単位を効率的に構築できるようになった。この成果を活かすと、様々なポリケチド系天然物の合成が可能となると期待される。
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今後の研究の推進方策 |
本年度、それぞれの方法論開拓において得られた初期的な知見を、一層効率的なものに醸成させ、実際に目標天然物の合成に有効な方法論として仕上げていく。また、本研究プロジェクト全体に関わる共通性の高い課題については、研究の進捗状況を鑑みながら、従事する人員を流動的に配置し、課題の迅速な解決を図りたい。また、合成化合物および最終物の精製・構造解析については、クロマトグラフィー、NMR、質量測定などの分離・分析技術のさらなる効率化を図るため、あらたなソフトウエアや、新手法の導入などを積極的に行っていきたい。
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