研究課題/領域番号 |
23000007
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研究種目 |
特別推進研究
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
巽 和行 名古屋大学, 物質科学国際研究センター, 教授 (10155096)
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キーワード | クラスター / 酸化還元酵素 / ニトロゲナーゼ / ヒドロゲナーゼ / COデヒドロゲナーゼ |
研究概要 |
最近我々が合成した、アミド配位子を持つ4Fe^<111>状態の高酸化型[4Fe-4S]クラスター[Fe_4S_4{N(SiMe_3)_2}_4](1)を出発に、還元を鍵とする反応から、新しい鉄-硫黄クラスターの合成を検討した。クラスター1に一当量のPEt_3を加えたところ、ニトロゲナーゼのP-クラスター骨格を再現する[8Fe-7S]クラスターが収率29%で得られた。この反応過程では、加えたPEt_3が高酸化型[4Fe-4S]クラスター1から硫黄を引き抜き、生じる[4Fe-3S]骨格がさらに[4Fe-4S]クラスターと反応して[8Fe-7S]骨格を生じたと考えられる。我々は、すでに単核の鉄アミド錯体を出発とする自己集合反応より、類似の[8Fe-7S]型クラスターの合成に成功しているが、本反応は熱力学的に安定と考えられている[4Fe-4S]骨格の一部を分解して、より大きい骨格を再構築した点で、合成化学的に興味深い。またこの結果は、P-クラスターの生合成の観点からも重要である。遺伝子を部分的に欠損させたニトロゲナーゼを用いた生化学研究から、P-クラスターの生合成過程では、隣接して生成した二つの[4Fe-4S]クラスターが還元条件下で[8Fe-7S]骨格に変換されると提案されている。この提案と本研究の結果は、還元条件下で2つの[4Fe-4S]骨格から[8Fe-7S]骨格を構築する点で共通しており、従ってP-クラスターの生合成過程においても[4Fe-4S]クラスターの還元的な脱硫反応を伴って[8Fe-7S]骨格が生じることが示唆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初計画で期待していた成果だけでなく、ニトロゲナーゼP-クラスターで見られる還元型と酸化型の骨格変換反応を見出したこと、光化学系II酸素発生中心に関連深いMn/Ca/Oクラスターの合成に成功したことは特筆に値する。
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今後の研究の推進方策 |
apo型のタンパクと金属-硫黄モデルクラスターを融合した実験を進め、酵素機能の解明及びクラスター活性中心の生合成過程の解明を目指す。平行して、COデヒドロゲナーゼの活性中心モデルとなるFe/Ni/Sクラスターの合成や、アセチルCoAシンターゼの活性中心構造をより良く再現するモデル錯体の合成、ニトロゲナーゼFeMo-co骨格モデルとなるFe/S/X(X=C,N,O)クラスターの合成を進める。
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