研究課題/領域番号 |
23000010
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
田中 雅明 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30192636)
|
研究分担者 |
大矢 忍 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20401143)
中根 了昌 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (50422332)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | スピン / スピントロニクス / 半導体 / 強磁性体 / 磁性半導体 / ナノ微粒子 / 分子線エピタキシー / トンネル効果 |
研究概要 |
半導体材料あるいはデバイス構造中に磁性元素や強磁性材料を構成要素として取り込み、キャリアの電荷輸送に加えてスピン自由度をも活用する新しい機能材料やデバイスを作ることを目的とした研究を行っている。本年度は、前年度末に導入した新規分子線エピタキシー装置の立ち上げを行うとともに、不揮発性および再構成可能な機能をもつデバイス作製のための材料形成および物性機能の制御を目指した基礎研究と、デバイス応用に向けた研究を行った。主な成果は下記の通りである。 (1)前年度末に導入したIII-V族磁性半導体・磁性金属エピタキシャル成長用MBE装置の立ち上げと条件出しを行い結晶成長を開始した。この装置を用いて、初めてn型電子誘起強磁性半導体(In,Fe)Asの作製に成功し、その基本的物性を明らかにした。 (2)III-V族強磁性半導体GaMnAs量子井戸における共鳴準位を系統的に観測・解析する共鳴トンネル分光法を確立し、GaMnAsのフェルミ準位EFは従来の通説とは異なり常に禁制帯中に存在すること、EFのMn濃度依存性が通常のp型半導体とは異なり異常な振る舞いを示すこと、不純物バンドが強磁性の起源として重要な役割を果たすことを明らかにした。 (3)IV族ベース磁性半導体として有望なFeドープGe薄膜の成長を行い、その電気伝導と磁性を詳細に評価した。Bを添加することによりこの系で初めて金属的なGeFeを得た。Feが低濃度の場合にはキャリア誘起ではない別の機構で強磁性秩序が現れることを実験的に示した。 (4)Fe電極とSiチャネルをもつマルチターミナルデバイス構造において、FeからSiへのスピン偏極した電子の注入をHanle効果により観測した。また、Si-MOSFETと強磁性トンネル接合を組合わせた疑似スピンMOSFET(PS-MOSFET)の作製プロセスを確立し、PS-MOSFETの基本特性を評価した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
予定通り、III-V族磁性半導体、磁性金属エピタキシャル成長用MBE装置の立ち上げを行ったこと、さらにスピンデバイスの構成要素となるIII-V族およびIV族ベースの磁性半導体、半導体と整合性の良い強磁性金属とそのヘテロ構造のエピタキシャル成長による形成、評価、物性制御の研究で成果を挙げた。新しいn型電子誘起強磁性半導体(In,Fe)Asの作製にも成功し、その基本的物性を明らかにした。これは初めてのnn型電子誘起強磁性半導体である。また、強磁性半導体トンネル接合、PS-MOSFETなどデバイス作製も開始した。
|
今後の研究の推進方策 |
引き続き、III-V族磁性半導体、磁性金属エピタキシャル成長用MBE装置を用いて成長の条件出しと最適化を行い、これまでよりもさらに良質のスピントロニクス材料を作製する。III-V族およびIV族ベースの磁性半導体、半導体と整合性の良い強磁性金属とそのヘテロ構造のエピタキシャル成長による形成、評価、物性制御の研究でそれぞれ成果を挙げているので、それらをさらに深化させ、デバイス機能の発現と実証につなげる。特にn型強磁性半導体とそのヘテロ構造の開発に取り組み、デバイス構造の作製も行う。いまのところ計画を遂行する上での大きな問題点は特に見あたらない。
|