研究実績の概要 |
1) Early endosomesは、神経細胞内で細胞体と樹状突起内に局在する。私達は、KIF16Bが細胞体及び樹状突起内でendosomeを輸送し、神経細胞内のearly endosomeの局在に必須で、KIF16Bの欠損により、AMPA受容体やNGF受容体の輸送と機能が障害され、KIF16B motor domainと2番目、3番目のcoiled-coil domainとのATP依存性の結合によりKIF16Bの微小管との結合能が制御され, 樹状突起にのみ局在する事を示した(Farkhondeh et al. J. Neuorsci 2015)。2) GTP型微小管及びGDP型微小管とKIF5C motor domainの結合複合体の高分解能クライオ電子顕微鏡解析を行い、KIF5C motor domainが、GTP型微小管に結合しやすい機序及びKinesinが微小管に結合する事によりKinesinおよび微小管双方に構造変化が起こり、これが方向性輸送の基盤となる事を解明した(Morikawa et al. EMBO J. 2015)。3) KIFsのin vivoでの制御機構を解明する為、定量的質量分析法によりin vivoのKIFsのリン酸化を網羅的・定量的に測定する手法を確立し、さらに其々のリン酸化部位の責任Kinaseを同定し上流のシグナルを明らかにする手法を確立し、それを用いてKIF2Aの全リン酸化部位を網羅した地図を作成した。また、各部位をリン酸化する特異的なKinaseを明らかにし、CDK、やROCKを同定しKIF2Aの部位特異的なリン酸化が神経細胞の突起伸長を正負に制御する事を示した(Ogawa and Hirokawa, Cell Rep 2015)。4) KIF3のカーゴ認識部位であるC末端がリン酸化されるとスパインの形状が変化することを発見し、さらにKIF3Aのリン酸化を引き起こす責任Kinase群としてPKAとCaMKIIaをリン酸化部位別に同定し、各Kinaseを活性化/阻害した時にKIF3AによるN-Cadherinの輸送が刺激依存的に変化することを突き止めた。さらにKIF3Aのリン酸化によりKIF3AとN-cadherinとの結合が増強し、N-cadherinの輸送が促進される事を示し、記憶や学習に代表される神経活動に依存して物質輸送が制御される仕組みを明らかにした(Ichinose et. al., Neuron 2015)。5) 主要な微小管関連蛋白MAP1Aの遺伝子欠損マウスの解析によりMAP1Aは、NMDA受容体NR2A, 2Bを細胞骨格に係留することによりその輸送機構を制御している事を解明した。(Takei et al. J. Neurosci 2015)
|