研究実績の概要 |
研究計画4年次に当たる今年度の主なる成果は以下の通りである。第一の柱であるオートファジーの膜動態を支える膜動態の機構解明に関しては、 1. オートファゴソーム形成の初期過程の理解が進んだ。初期過程の制御に中心的役割を担うAtg13はN-末端HORMAドメインとC-末の長い天然変性領域からなる。TORにより高度にリン酸化されたAtg13は、飢餓により速やかに脱リン酸化が起こる。天然変性領域に多数のリン酸化部位を同定した。その領域内にAtg1とAtg17の結合領域を見いだした。これらの結合領域ペプチドとAtg1, Atg17との共結晶の構造解析から、それぞれAtg1とAtg17との結合様式が明らかになった。Atg13の脱リン酸化によってAtg1のみならずAtg17との結合が制御され、Atg1, Atg13, Atg17, Atg29, Atg31からなる5者複合体が形成される機構が明らかとなった。ついでAtg13のHORMAドメインを介してAtg9ベシクルがリクルートされことを明らかにした。 選択的オートファジーはHrr25キナーゼによるリセプターのリン酸化が重要な制御をしていることが明らかになった。 2. 第二の柱であるオートファジーの増殖時の生理機能に関しても、新たな成果が得られた。メタボローム解析から飢餓誘導のオートファジーによって、多量なRNAが分解されることを明らかにした。この過程に働くRNase(Rny1), nucleotidase(Pho8), nucleosidase(Urh1, Pnp1)を同定した。最終産物である塩基はその殆どが細胞外に排出される。生理的に重要なZnの飢餓によって顕著なオートファジーが誘導されることを見いだし, その機構の解析を進めた。非発酵培地で増殖する酵母の炭素飢餓によって誘導されるオートファジーの解析が進んだ。
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