研究実績の概要 |
最終年度である28年度4報の原著論文を発表した。 第1の柱である分子機構に関しては オートファゴソーム形成の場であるPAS形成の足場として働くAtg1キナーゼ複合体の形成過程を制御するAtg13の構造の解明が進んだ。Atg13はN-末にHORMAドメインをもち、続く長いC-末は天然変性領域であり、多数の残基がTOR1によりリン酸化をされている。その領域にAtg1と、2つのAtg17結合領域を同定した。それらの結合はリン酸化によって制御され、Atg13の脱リン酸化に伴い5者複合体(Atg13-17-29-31-1)が形成される。さらにAtg13が2つのAtg17を結合することで, PASの高次の集合体が形成される。集合体形成によりAtg1キナーゼが活性化され、ついで複数のHORMAドメインにAtg9が結合することでAtg9小胞がPASにリクルートされる。PASがAtgタンパク質と脂質からなる柔軟で動的な構造であることが明らかとなった。 第2の柱である生理機能に関しては、 必須元素である亜鉛Zn飢餓に応答してバルクオートファジーが誘導される。その誘導はTORC1の制御下に有り、極端な亜鉛欠乏時に, 亜鉛タンパク質がオートファジーにより液胞で分解され、細胞質に輸送されることで増殖を可能にしている。さらに汎用されている合成培地ではオートファジー不能株はグルコースからエタノールへの切り替え、Diauxic shifが不能となる。その原因は鉄の欠乏による。酵母細胞は鉄タンパク質やミトコンドリアのオートファジーにより液胞内分解することにより鉄の利用効率を上げて呼吸増殖に対応している。
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