研究課題
基盤研究(S)
大型類人猿と鯨類を対象にこころの進化における系統発生的制約と環境適応の問題について検討してきた。物理的世界の知覚・認識・理解における身体的制約について、バンドウイルカを対象に空間認識における自己の身体と環境の座標系との間の相互作用について検討を行った。また、チンパンジーを対象に、身体的自己認識の重要な要素である自己作用感に関する実験的研究を進めた。さらに、ヒトの乳児とチンパンジーの成体、ニホンザルの乳児を対象に、運動と形の情報を統合して物体を認識する能力と、その初期発達について検討した。その結果、運動ど形を時空間的に統合する能力は、チンパンジーよりもヒトの方が高く、ヒトの乳児では生後5ヶ月頃から発達することが示唆された。リハビリ施設に暮らすオランウータンの乳児を対象にした物理的世界の認識の発達についても研究を進めた。社会的世界の知覚・認識・理解における制約の相互作用については、チンパンジーやバンドウイルカを対象に身体動作の同調に関する基礎的な実験を行った。チンパンジーでは他個体の反復動作からの影響を受けはするものの「同調」にまでは到らないこと、またバンドウイルカでは、複数個体が同時に演技する際に自発的に動作が同調する場合があることが示された。さらに、協力行動時にホイッスルと呼ばれる音声を発して積極的にタイミングを合わせている可能性も示唆された。さらにチンパンジーを対象に、顔認識に関する様々な実験を実施した。音象徴に関する実験をチンパンジーで開始するととも.に、ヒトを対象にした認知神経科学的研究についても着手した。一方バンドウイルカを対象にした視覚的な種弁別と個体識別、ベルーガを対象とした視覚的な種弁別についても検討を行ってきた。これらの飼育下での実験的な観察に加えて、飼育下および野生下のイルカ類(シャチとミナミハンドウイルカ)を対象とした音による物理環境や社会環境の認識に関する調査についても検討を進めた。
2: おおむね順調に進展している
本年度は、各研究分担者のこれまでの実績を基盤に研究を進めると同時に、それぞれの研究環境を整えるため、設備の購入を進めた。研究自体は順調に進捗しており、次年度に向けての展開を図っていきたい。
本年度は博士研究員の採用よりも環境整備に重点を置いた。次年度に向けて、本計画を推進するに足る若手研究者の発掘にも鋭意努力したい。イルカ類研究についてはさらに研究環境の整備を研究場所及び研究設備の両面から進めていく。
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