研究課題
動物の行動様式は、種ごとに異なっている。本研究は、神経回路のどのような違いが行動の種による差を作り出すのかを明らかにし、行動の多様性の進化を支える遺伝子と細胞レベルの機構を解明することを目的として以下の実験を計画、実施した。(1)D. melanogasterのfru調節領域(約30kb)とD. subobscuraの対応領域をそれぞれGAL4に接続し、D. melanogasterのゲノムの定位置に挿入して、このGAL4によってdTrpA1の発現を誘導、高温条件にその雄を置くことで生起する行動を観察した。これによりD. subobscuraの行動様式がD. melanogasterに生じるならば、fru調節領域の働きの種差、その結果として生ずるfru発現細胞の違い(“melanogaster特異的にfruを発現する細胞” や “subobscura特異的にfruを発現する細胞”)が行動の種差を生むとの仮説が支持される。(2)上記の仮説が支持される場合、D. subobscuraそのものの脳内で “subobscrura特異的fru発現ニューロン”をfru-GAL4>UAS-dTrpA1により強制活性化し、着目しているsubobscura特異的行動が引き起こされることを立証する。本研究採択時に設定した課題は上記の(1)のみであったが、仮説の検証には(2)が不可欠との観点から、(2)をも実施した。(1)についてはmelanogaster fru-GAL4の作成が難航したがついに成功し、subobscura fru-GAL4によって誘起されるlicking行動がmelanogaster fru-GAL4ではほとんど全く誘起されないという結果を得、当初の仮説が強く支持された。(2)についてもsubobscuraにCRISPR/Cas9法を適用してfru座にAttP siteを挿入するという画期的成果を挙げ、subobscura fru-GAL4作成に道筋をつけた。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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