研究課題
基盤研究(S)
(1)シナプス前終末におけるミトコンドリアの役割を明らかにするために、マウス海馬スライス標本を用いて、5Hz、3分の持続刺激をシャッファー側枝に与え、CA1領域にて興奮性シナプス応答を細胞外電位記録法により記録した。5Hz刺激により一過性のシナプス伝達増強が起こり、それに続いて、抑制が起こることを再確認した。5Hz刺激後には、シナプス伝達の急速な減弱とそれに引き続く抑制からの緩徐な回復が観察されたが、これらの時間経過はミトコンドリア機能阻害薬により有意な変化を示した。これらの結果から、シナプス前終末におけるミトコンドリアがシナプス伝達に関与することが明らかとなった。(2)海馬歯状回における興奮性シナプス伝達の長期増強(LTP)は、海馬CA1領域と同様、NMDA受容体依存的に誘導されるが、抑制性入力によるLTPの調節には両脳領域間で異なることが示唆されていたが、その詳細は不明であった。歯状回とCA1領域問でGABAによる抑制を比較したところ、高頻度刺激により誘発されるシナプス応答は、歯状回により強い抑制性の影響を与えることが明らかとなった。また、シナプス外のGABA_A受容体によるトニック抑制も歯状回により強い抑制性の影響を与えることも明らかとなり、これらの結果から、歯状回ではLTPの誘導の際の抑制性入力の関与が海馬CA1領域に比べてより大きいことが判明した。(3)IL-1受容体の機能を阻害する分子をノックアウトした慢性ストレス負荷モデルマウスの機能解析を行った。尾懸垂試験と強制水泳試験において、ノックアウトマウスでは週齢依存的にうつ様行動が減弱していた。それに伴い、アドレナリン受容体のα1Aサブタイプの発現が上昇し、それがうつ様行動と同様の週齢依存性を示すことを明らかにした。したがって、うつ様行動にα1Aサブタイプが関与することが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
部位特異的遺伝子改変マウスの作製は順調に進んでおり、また、すでに作製済みの遺伝子改変マウスの機能解析については、ほぼ予定通りに進展している。
今後は、当初の計画通りに進めるとともに、一部、関連した遺伝子改変マウスが新たに入手可能となったので、それらについても、余裕があれば並行して解析を進める。また、電気生理学的解析については、今後、予想よりも早く進展することも予想されるが、その場合には、次年度以降に予定していた項目を前倒しして実施することも考慮する。
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Molecular Brain
巻: 5 ページ: 8
Neuroscience Letters
巻: (印刷中)(未定)
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http://www.ims.u-tokyo.ac.jp/NeuronalNetwork/Neuronal_Network/Index_japanese.htm