研究課題
①CASTを欠損するノックアウトマウスを用いて伝達物質放出機構を検討した。(1)海馬CA1領域における興奮性シナプス伝達の入出力関係において伝達効率が野生型より高かった。(2)微小興奮性シナプス後電流の振幅が野生型より増大していた。(3)伝達物質の放出確率が低下していた。(4)シナプス間隙におけるグルタミン酸濃度が高いことがわかった。(5)5Hzの持続低頻度刺激後にみられるシナプス抑制が有意に大きかった。(6)Rab6が関与することを生化学的に明らかにした。(7)海馬CA3領域苔状線維シナプスでの可塑性の異常の可能性を見出した。②ミトコンドリアのカルシウム放出機構に関与する分子が海馬CA1シナプスの前終末でのみ欠損するマウスの作製に成功した。この変異マウスの海馬スライスでは、5Hz刺激後にみられるシナプス抑制に異常がある傾向がみられた。③海馬特異的にカルシウム放出調節機能分子が欠損する変異マウスの作製に成功した。これらの変異マウスを用いて、海馬における役割を電気生理学的に解析した。まだ例数は十分ではないものの、コンディショナルノックアウトマウスにおいて、LTPの減弱傾向とオープンフィールドテストでの多動がみられた。④CaMKIIalphaの酵素活性のみが消失しているノックインマウスにおいて、シナプス前性の短期可塑性であるテタヌス後増強が、特殊な条件下では野生型に比べて大きく増大していることを見出した。⑤SNARE蛋白分子の遺伝子改変マウスの海馬CA1領域において、入出力関係が大きく減少していることがわかった。それと合致し、2発刺激促通が大きく増大し、伝達物質の放出確率の低下が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
実験計画は、一部に遅れが多少みられるものの、順調に進捗している。最終年度に予定していた実験をすでに開始しており、ある程度データが出ていることから、全体としては、少なくとも予定通りの成果は得られるものと予想するが、場合によっては、予想以上の成果も見込まれる。実際、当初の研究計画にはない関連実験項目もすでに進めており、そのいずれにおいても論文発表済みあるいは論文投稿準備中である。
最終年度も、これまでの研究を計画通りに進めるとともに、本研究計画に密接に関連した別の遺伝子改変マウスについても詳しい解析を進め、本研究の最終的な目的である神経伝達物質放出の修飾機構の詳細を明らかにする。ほとんどの項目で、すでに、かなりデータが揃ってきているため、論文発表を行って、情報発信を進める。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件) 図書 (2件) 備考 (1件)
Journal of Neuroscience
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10.1523/JNEUROSCI.1621-13.2014
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http://www.ims.u-tokyo.ac.jp/NeuronalNetwork/Neuronal_Network/Index.html