研究課題
【1】秒~分~時間の間隔で入ってくる2つの情報の間の連合による書き換え行動タグ: 新規物体認識(NOR)課題と新規文脈記憶課題へ暴露することで短期NOR記憶が長期記憶へと変換する行動タグ系において、新規文脈記憶課題の海馬CA1セルアセンブリ活動を光遺伝学的に抑制すると、NOR長期記憶の想起が完全に阻害された。両者のセルアセンブリのオーバーラップ(共有)が行動タグ成立のメカニズムであることを強く示唆している。 シナプスタグ: EGFP融合Homer1a蛋白質の単一スパイン内での消光後蛍光回復(FRAP)のシナプス活動依存性成分はPKGの活性化のみで説明できる結果を得たので、これがシナプスタグの分子実体として有力である。【2】日~月の間隔で入ってくる情報間の干渉による書き換え異なる連合記憶同士の連合(高次の連合): 前年度に、味覚嫌悪学習(CTA)と音恐怖条件付け(AFC)を別々に学習させた数日後に、それぞれの課題のCSのみを連続して提示することで、本来独立した記憶であったCTAとAFC記憶が連合する系を確立した。本年度はこの系に光遺伝学を導入して、CTAとAFCの連続想起時に片方の扁桃体セルアセンブリをレーザー光照射により抑制しておくと、セルアセンブリのオーバーラップが低下すると共に、CTAとAFC間の記憶の連合が抑制された。2つのセルアセンブリ間のオーバーラップが、再固定化メカニズムを利用した記憶の高次連合に重要な役割を果たしていることを強く示唆している。 再固定化: 前年度までに確立した海馬歯状回のin vivo LTP系を用いて、本年度はオートファジーの亢進がシナプスレベルの不安定化を促進することを見出した。以上から記憶が書き換えられアップデートされるメカニズムに共通する原理として、セルアセンブリのオーバーラップ率の上昇が主要な役割を果たしていることが強く示唆された。
2: おおむね順調に進展している
CS-US連合によるアップデート、行動タグによるアップデート、再固定化機構を利用したアップデート(高次の連合)のいずれにおいても、連合時に形成される2つの記憶エピソードのセルアンサンブルのオーバーラップが記憶アップデートに共通する細胞集団レベルのアップデート機構であるという我々の仮説を強く支持する結果を得た。シナプスタグに関しては、シナプス活動によるNMDA受容体を介したカルシウム流入の結果、持続的なPKG活性化によりFRAPが起きた。PKG活性があればカルシウム流入がなくともFRAPが起きた。PKG阻害剤はFRAPを可逆的に抑制した。以上を確認補強する実験を行えば、PKG活性がシナプスタグ分子という結論を導ける。
記憶がアップデートされるメカニズムの共通性を解明するために、CreER-loxP, レンチウイルス遺伝子導入系、光遺伝学などの技術を駆使して、セルアンサンブルのオーバーラップのみを抑制したときに、記憶のアップデートがどのような影響を受けるのかを解析する。特に、再固定化によるアップデート(高次連合)について解析する。また、行動タグ研究、高次連合研究のいずれも論文を作成し、しかるべき学術雑誌に投稿する。シナプスタグに関しては、PKG阻害剤による阻害の可逆性、ブリーチとのタイミングの依存性、等の確認補強実験を行い、PKG活性化の持続性を更に検討する。2)持続的活性化の生化学的要件の検討を行う。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (10件) 図書 (4件) 備考 (1件)
Cell Reports
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DOI: 10.1016/j.celrep.2015.03.017
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http://www.med.u-toyama.ac.jp/bmb/index-j.html