研究課題/領域番号 |
23220012
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
山口 隆美 東北大学, 大学院医工学研究科, 教授 (30101843)
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研究分担者 |
今井 陽介 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60431524)
沼山 恵子 東北大学, 大学院医工学研究科, 准教授 (30400287)
大森 俊宏 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10633456)
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研究期間 (年度) |
2011-05-31 – 2016-03-31
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キーワード | 計算生体力学 / 循環器 / 消化器 / 呼吸器 / マラリア |
研究概要 |
本年度の主な成果は以下のとおりである. (1)クライオ電子線トモグラフィー法と呼ばれる,特殊な電子顕微鏡(CTと同じ原理で微細な物質の3次元構造を解析できる)を用い,哺乳類(マウス)気管繊毛の三次元内部構造を世界で初めて解明することに成功した. (2)血小板やマラリア感染赤血球の接着に関連するligand-receptor結合を数理モデル化し,細胞・組織レベルのシミュレーション手法に導入することによって,様々な接着因子が血管壁近傍の細胞挙動に与える影響を明らかにするためのシミュレーション手法を構築した. (3)格子ボルツマン法のGPU計算に基づく呼吸の患者個別モデリング手法を開発し,臨床現場に設置可能なパーソナルコンピュータでの計算を可能にした.またこれを用いて吸入型薬剤の実形状気管支への沈着量を解析し,粒子径に応じた息止めの効果を明らかにした. (4)実形状の胃に対する食物流動を初めて解析し,幽門前庭部において時間平均的な再循環が生じていること,この再循環領域で攪拌が進行することを明らかにした.また,様々な姿勢に対する解析より,幽門が胃体部より上部に位置するような姿勢においては撹拌効率が低くなることを示した. (5)前年度に開発したがん細胞を血液から分離する診断用バイオチップを改良した.これは慣性力を応用して分離するPDMS製バイオチップであり,多段階方式により85%の回収効率および120倍の濃縮に成功した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成24年度の研究計画は分子スケールおよび細胞スケールの研究課題が中心であった.これらのスケールでは,電子顕微鏡による気管繊毛の三次元構造の解明をはじめ,当初の研究計画にはなかった成果も次々と上がっている. さらに,平成25年度以降に計画していた臓器スケールの研究課題にも着手しており,臨床応用可能な薬物吸入効果の患者個別シミュレーション手法の構築や胃内部の再循環と食物撹拌の関係の解明に成功している. これらの成果は海外の一流雑誌に10件の査読付論文として発表し,また5件の招待講演を含む31件の国際会議発表を実施しており,当初の計画以上に進展しているとする根拠である.
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今後の研究の推進方策 |
当初計画どおり,当面は分子スケールから臓器スケールまでの統合シミュレーション技術の開発を推進する.特に以下の項目について推進する. (1)血小板血栓,マラリア感染赤血球・がん細胞の血管内皮細胞への接着現象を対象としたナノ医工学シミュレーション (2)気管繊毛のナノスケールの構造・運動を導入した,気管上皮細胞によって駆動される流れ場のシミュレーション技術の開発 (3)ミクロスケールの赤血球運動に基づくマクロスケールの連続体モデルの開発 (4)固体成分・液体成分・胃液などが混合された食物に対する消化器系流動シミュレーション技術の開発
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