研究課題/領域番号 |
23220013
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
砂川 賢二 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50163043)
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研究分担者 |
岸 拓弥 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (70423514)
廣岡 良隆 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90284497)
井手 友美 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (90380625)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 自律神経制御 / 循環制御 / 心不全 / バイオニック |
研究実績の概要 |
平成25年度までの研究成果を受け、平成26年度はバイオニック自律神経制御システムの小型化を継続するとともに、圧反射不全動物モデルを新たに作成し、容量耐性の低下を慢性実験で確認した。●バイオニック自律神経制御システム開発:小動物でバイオニック自律神経制御システムの長期にわたる治療効果を評価するためには、小型化が不可欠になる。そのため、回路の単純化および消費電力の低減を進めた。その結果、従来の試作器の1/2の重量まで小型化が成功した。制御部は柔軟な負帰還制御ができるように、畳み込み積分が可能な仕様にした。●求心路を保存した圧反射不全動物モデルの作成:圧反射の求心路の切断で圧反射不全動物は容易に作成することができる。しかしながら、このモデルではバイオニック自律神経制御システムが求心路に介入することが出来ない。そこで、一部の求心路を温存し、他の求心路は切断するモデルを作成した。この残存した求心路を駆動する圧受容器は頸動脈の結紮により減圧することにより、圧反射不全モデルを構築することができた。●バイオニック自律神経制御システムによる圧反射不全の克服:圧反射不全モデル動物に対して、バイオニック自律神経制御システムを動作させることにより、生理的な圧反射を再構築することができた。同時に、血圧の安定化、容量耐性の改善等がもたらされ、心不全の治療に有効であることが示された。今後このモデルを用いることで、短期的、中長期的なバイオニック自律神経制御システムの治療効果を評価する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
●高速サーボポンプの設計開発:圧反射の動特性を明らかにするために、圧受容器に広帯域の圧変動を入力するサーボポンプが不可欠である。従来の経験を集約した結果、遮断周波数は100Hzに達する超高速サーボポンプが完成した。予定以上の開発成果である。●バイオニック自律神経制御システムの制御アルゴリズム開発:バイオニック圧反射システムは動脈圧を感知し、圧受容器求心路を電子的に刺激することで圧反射を再構成する。すでに仕様を満たす実時間動作システムが完成しているが、実用化には演算量の低減は不可欠である。再帰型のアルゴリズムの開発により演算量を1/1000まで低減することに成功した。●求心路を保存した圧反射不全動物モデルの作成:圧反射の求心路の切断で圧反射不全動物は容易に作成することができる。しかしながら、このモデルではバイオニック自律神経制御システムが求心路に介入することが出来ない。そこで、一部の求心路を温存し、他の求心路は切断するモデルを作成した。このモデルを用いることで、心不全や高血圧に自在に圧反射不全を合併させることが可能になり、多数の病態を実験的に作成出来るようになった。今後の当該分野の発展に大きく寄与するものと思う。●バイオニック自律神経制御システムの有効性の検証:試作されたバイオニック自律神経制御システムが想定した機能を発揮するかどうかを求心路を保存したモデルで評価した。その結果、亜急性期においても圧反射機能を任意に制御できることが示された。バイオニック自律神経制御システムの治療効果を多数の病態で評価する基盤が確立した。上記の何れも当初の計画以上の進展と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度までの研究成果を受け、平成27年度はこれまで開発してきた技術を統合しバイオニック自律神経制御システムを完成させる。このシステムを用いて圧反射不全および心不全に対して神経介入治療を行い最適治療条件を探索する。●バイオニック自律神経制御システムの開発:非植え込み型のシステムは既に完成しているので、最終年度は植え込み型のシステムの開発を行う。その際に、血圧測定は当初はテレメトリ装置で行う。その血圧信号を入力として体外のPCで制御のための信号処理を行い、植え込まれた無線神経刺激装置を制御し、血圧を制御する。動作確認したのち、最終段階の完全植え込み型のバイオニック自律神経制御システムを開発する。●制御論理の開発:制御に際して60秒程度のインパルス応答を実時間で畳み込み積分する必要がある。畳み込み積分は演算量が多く、植え込み型装置に馴染まない。そこで、インパルス応答をパラメトリックにモデル化し、演算量の激減を試みる。●圧反射不全に対するバイオニック自律神経制御システムの治療効果:圧反射不全動物の血圧のヒストグラムを測定し、バイオニック自律神経制御システムにより血圧および左心房圧のヒストグラムの特性がどのように変化するのか比較する。予備実験ではシステムが作動することで、血圧変動は正常近くまで減少することが示されている。●高血圧性心不全のバイオニック治療戦略の確立:高血圧発症ラットに上記と同様の圧反射不全を作成する。このモデルは当初は収縮機能が保たれた心不全を呈し(収縮能保持型)、時間と共に収縮機能も低下していく(収縮能低下型)。この状態でバイオニック自律神経制御システムを動作させ、その心房圧増加の抑制効果(心不全治療効果)を急性期および慢性期に評価する。同時に一般的な心不全重症度の評価を行い、最適治療条件を探索する。
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