研究課題/領域番号 |
23220014
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
赤池 敏宏 東京工業大学, 生命理工学研究科, 特任教授 (30101207)
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研究分担者 |
伊勢 裕彦 九州大学, 先導物質化学研究所, 准教授 (10324253)
原田 伊知郎 東京工業大学, 生命理工学研究科, 講師 (00361759)
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研究期間 (年度) |
2011-05-31 – 2015-03-31
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キーワード | ES/iPS細胞 / 再生医工学 / 細胞用まな板 / 細胞マトリックス設計 / 神経細胞 / E-カドヘリン / N-カドヘリン |
研究概要 |
重要な新展開:①各種キメラタンパク質のHEK239細胞の培養による効率的な大量合成法と精製法を確立した。②これらのキメラタンパク質の各種モジュールへのコートによるマウスES/iPS細胞の未分化・大量培養が可能になった事。マウスES/iPSについてはすべての場合において単一細胞レベルで増殖させEDTA等のキレート剤で脱着、回収する事ができた。ヒトiPS細胞についてはE-カドヘリン-Fcキメラタンパク質のコート濃度、カルシウム濃度、ROCK阻害剤等々の因子を制御することにより単一細胞系、長期間培養、脱離回収の目途を得る事ができた。③N-カドヘリン-Fc、VE-カドヘリン-Fcの大量合成と精製ならびにコート法による神経細胞、血管内皮細胞の長期間の培養と機能維持への高い有効性が確認できたこと。(とりわけマウスニューロスフィア(ES/iPS細胞から作られた神経幹細胞スフェロイド)の培養をN-カドヘリン-Fc上で行う事により、極めて効率良く神経突起のよく発達したニューロン細胞への分化が実現することも判明した。④マウスES細胞の肝細胞への分化とソーティングに当研究室の開発した肝細胞特異的認識をする糖鎖高分子(PVLA)が促進的に機能する事も明らかにした。(ヒトiPS系への応用が期待)親疎水性の制御できる三次元ゲルとしての温度応答性ゲルを数種類選択あるいは分子設計あるいは共同研究を通じて本研究の主要マトリックス基材であるE、N、VEの各種カドヘリンキメラタンパク質の固定材料として応用する試みを開始した。 その他アドレノメドリン、E-カドヘリンのFcフラグメントあるいはHistagとのキメラタンパク質の設計とEC/ES細胞培養への応用を展開し新しいマトリックスとして再生医工学分野にデビューさせる事ができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初期待していた肝細胞、さらには神経細胞へのマウスES細胞の分化はほぼ完璧に実現し、他の細胞認識性マトリックスとの併用による肝細胞分化促進機能を有する細胞用まな板(Cell-Cooking Plate)の開発に成功した。マウスES/iPS細胞のE-カドヘリン上での10回近くのくり返し培養とくり返し回収をノンストレスで実施できる事も確認した。ただし当初予定していたヒトiPS細胞(ヒトES細胞実験は不許可)にこのまな板を応用する事は同一条件下では困難であり、ようやく昨年度末に条件を変えることにより単一細胞培養系への目途を立てる事が出来た。 以上の計画の展開を総括して『おおむね順調な進展』と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度の推進方策としては2つ挙げられる。 ①マウスES/iPS/EC細胞-E-カドヘリン-Fcキメラタンパク質系で実現した二次元/三次元大量培養系を細胞のシグナル伝達が微妙に異なるヒトiPS細胞(ヒトES細胞は倫理的理由により実験不可)の系での実現を達成する事。 ②ファイバー系あるいは温度依存性ゲル(インジェクタブルゲル)を利用した三次元系培養においても二次元のコーティング用としてのE/N/VE-カドヘリンキメラタンパク質を応用するシステム(肝臓、血管、神経組織)を完成し各種医薬開発評価における肝臓、血管、神経組織単独の、あるいはその組み合わせによる高次組織チップを完成させたい。さらに動物実験による脊髄損傷時の神経組織の再建、肝臓組織の再建をめざす臨床系研究者との次世代共同研究につなげたいと考えている。
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