研究課題/領域番号 |
23221005
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研究種目 |
基盤研究(S)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
武田 俊一 京都大学, 医学研究科, 教授 (60188191)
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研究分担者 |
廣田 耕志 京都大学, 医学研究科, 准教授 (00342840)
山田 亮 京都大学, 医学研究科, 教授 (50301106)
岡田 徹也 京都大学, 医学研究科, 助教 (70378529)
笹沼 博之 京都大学, 医学研究科, 助教 (00531691)
清水 宏泰 大阪医科大学, 医学部, 准教授 (60340551)
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キーワード | 有害化学物質 / ハイスループットスクリーニング / 遺伝毒物学 / 発がん物質 / 変異原 / 情報学 / データマイニング / DT40細胞 |
研究概要 |
「研究の目的」 ●現状の問題点 化審法で定められた、化学物質の変異原性(発がん性)を検出する検出手法(エームステスト、小核テスト等)は、特異性に問題がある。 ●問題を克服する為の、我々の提案 有害化学物質の検出手法に遺伝学を応用する。具体的には、1つの親株から多種類の遺伝子破壊細胞を準備し、それらに対する化学物質の影響を解析する。そしてどの遺伝子の破壊細胞が各化学物質に感受性を示すかを調べる。例えば、DNA遺伝子の破壊細胞に毒性を発揮する化学物質にはDNA毒性(変異原性)があると結論できる。 遺伝学を応用するメリットは以下のとおりである。我々の手法では、有害化学物質の毒性をエームステスト等、特定のバイオアッセイではなく、遺伝子(例、紫外線DNA損傷を修復する酵素をコードする遺伝子)で定義する。将来、各遺伝子の機能についての知識は加速度的に蓄積する。我々が提案する有害化学物質検出手法は、この遺伝学の研究成果を取り入れることができ、それによって検出手法の精確さを向上できる。 「研究実施計画」 (1)1つの親株から多種類の遺伝子破壊細胞を準備し、それらに対する化学物質の影響を解析する。 (2)我々が開発した解析方法を米国National Instituteof Health (NIH)に持ち込む。NIHと共同研究しなければならない理由は、NIHのなかのNational Toxicology Programが、新規に開発された毒性試験方法を検証する為の標準試薬(約10,000種類の、毒性が精密に解析済みの化学物質のライブラリー)を持つからである。 (3)NIHで解析した実験データはすべてPub Chemにて公開される。NIHの公開データをコンピューターに学習させ、化学物質の毒性を予測するプログラムを作る。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.放射線照射によって生じた2重鎖切断を修復するのに必要な遺伝子の候補を新たに7種(RNF4,Mre11(3種類の点変異),DNase2,MRG15,ELG1,ALC1,PIF1)破壊した。RNF4遺伝子破壊細胞は、従来の学説を破る非常に興味深い実験結果(RNF4は、DNA修復ではなく、DNA損傷チェックポイントに機能する)が得られた。 2.染色体分析は、放射線照射によって生じる2重鎖切断を検出する最も信頼性の高い解析方法と考えられてきた。しかし、そうではないこと(偽陽性があいうること)、そして偽陽性を排除する簡単な遺伝学的実験手法を開発した(論文投稿中)。 3.ニワトリDT40細胞(Bリンパ細胞株)は、培養皿に付着する細胞と違い、アスベストなどのナノ粒子を細胞に取込めなかった。その結果、ナノ粒子のDNA毒性を、遺伝子破壊DT40細胞を使って検出することができなかった。我々は、その問題を克服した。 4.小胞体ストレスを正確に解析する為の遺伝子破壊細胞(ATF6/PERK/XBP13重遺伝子破壊株)ができた。 5.ハイスループットスクリーニングは、コストがかかるが故に、データの再現性を確認する為に、必ずしも何回も実験を繰返すことができない。その場合でも、有意差を検定する統計学的解析手法を開発した。今秋に論文投稿する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
1.米国NIHは、標準試薬(ゴールデンスタンダード)の種類を従来の1800種類から10,000種類に今秋に増加させる。10,000種類を揃え次第、研究員を1年間派遣する予定である。そして我々が確立した遺伝学的手法の妥当性を、標準試薬を解析することによって検証する。 2.分担研究者の廣田准教授が、2012年4月から首都大学東京に教授として栄転した。廣田教授が、首都大学東京の中の同僚の磯辺教授と共同研究を始めることができ、次世代プロテオノミックス(SILAC:stable isotope labeling using amino acids in cell culture)を最新型の質量分析機器(OBトラップの付いたもの)を使ってできることになった。我々が作出した遺伝子破壊細胞にSILAC解析を応用することによって、例えば、リン酸化酵素の基質を高感度に解析しうる。
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