研究課題
基盤研究(S)
1.結晶成長:異種基板上の半導体ナノワイヤ成長の新たな研究として、23年度は、主にグラフェン及び薄層グラファイト上のナノワイヤ成長の検討を進めた。異種接合面での格子整合条件の整ったInAsが、自己触媒型VLSモードで成長することが明らかとなった。SP2のグラファイトとSP3のInAs(111)A面は格子定数が一致するためファンデルワールス結合が支配的となるエピタキシャル成長モードが確認された。単層グラフェン上ではさらに、上下両方向に成長する様子が電子顕微鏡で確認された。また、InP基板上のInPナノワイヤにおいては、結晶構造解析も進め、結晶成長条件によりセン亜鉛鉱型からウルツ鉱型に結晶の対称性が変わることも見出した。さらにガラス基板上へのLEDを支える基礎技術としてのポリシリコン上のIII-V半導体ナノワイヤの成長を開始し、成長方向制御、均一性向上に努めた。2.発光素子応用:これまでGaAs系ナノワイヤを用いて赤外領域のLEDを作製してきたが、新たに可視領域(赤色)での発光を目指したGaInP系のナノワイヤ成長を試み、均一なワイヤが得られる条件を明らかにした。3.ナノワイヤ太陽電池:効率的に電子・正孔を分離できるコアシェルpn接合型太陽電池の作製と評価を進めた。InP系では、AlInPパッシベーション層の効果により内部量子効率が大幅に改善されるとともに、エネルギー変換効率も向上することが明らかとなった。また、必要な内部効率の測定に必要な装置を23年度に導入した。さらに、年度途中で、透明電極(ITO)とナノワイヤの間が高抵抗であることを突き止めた。この改善にはTi薄膜の堆積が有効と考えて、次年度に予算を繰り越す形でTiのスパッタ装置を導入した。
2: おおむね順調に進展している
(23年度の一部予算の繰越のため、報告は24年度末までを含めた。)1.結晶成長:異種基板上の半導体ナノワイヤ成長として、23年度から開始したガラス基板上へのLEDを支える基礎技術としてのポリシリコン上のIII-V半導体ナノワイヤの成長方向(垂直)制御、均一性向上の技術を確立した。また、ナノワイヤのフレキシブルデバイス応用のための技術として、これまでの実験で基板の選択成長用開口径を小さくすることでワイヤアレイが部分的ではあるが剥離できることが確認した。2.発光素子応用:マルチカラーLEDの試作を目的に、GaP系のナノワイヤ選択成長技術の改良を進めた。GaPは結晶構造がセン亜鉛鉱からウルツ鉱に変わることで発光素子に適した直接遷移型半導体となる。これまでにウルツ鉱型の得られるInPナノワイヤをコアとして、側壁にウルツ鉱型GaPシェル層を成長させることができた。発光特性などの評価を今後すすめる。3.ナノワイヤ太陽電池:効率的に電子・正孔を分離できるコアシェルpn接合型太陽電池の作製と評価を進めた。InP系では、AlInPパッシベーション層の効果により内部量子効率が大幅に改善されるとともに、エネルギー変換効率も3.54%から6.35%に向上することが明らかとなった。さらに、将来のタンデム構造を目指してGaAs系でもコアシェルナノワイヤ太陽電池を試作した。同様にInGaP3元混晶層をパッシベーション層に用いることで4.01%のエネルギー変換効率が得られた。4.ナノワイヤトランジスタ:光デバイスと関連する研究としてトランジスタの研究も併せて進めた。InAs縦型サラウンディングゲートトランジスタをシリコン基板上に作製し、高効率のトランジスタが得られた。結果はNature8月号に掲載された。
23年度の一部予算の繰越のため、内容は25年度以降の研究推進方策とした。結晶成長では、引き続き異種基板上のナノワイヤ成長の展開を進める。フレキシブルデバイス応用のための成長技術として、ナノワイヤ構造を基板から剥離し、より柔軟性のある基板に貼り付けることが出来るとフレキシブルデバイス作製技術の確立をはかる。次に発光素子応用では、GaPの結晶構造をウルツ鉱型に変える技術として、既にウルツ鉱型が得られているInPなのワイヤをコアとしてGaInP、AlGaPなどを横方向成長技術によりシェル層とする結晶成長技術を確立する。また横方向量子井戸構造の作製により、主に可視光域の波長可変の発光素子を作製する。ナノワイヤ太陽電池の研究では、これまでのコアシェルpn接合構造から、縦方向pn接合構造に変えることで、将来的にタンデム型(多層構造)のナノワイヤ太陽電池を目指す。この構造では、より幅広く太陽光波長を吸収できることから、超高効率が予測されている。またナノワイヤの応用を光デバイスに限定せずに、縦型FET及びトンネルFETなどの構造を挟ギャップ半導体であるInAsなのワイヤを用いるとともにシリコン基板上に作製する。
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