研究概要 |
本研究課題の「哺乳類特異的ゲノム機能」では、1)哺乳類特異的遺伝子の機能2)哺乳類特異的エピジェネティック機構であるゲノムインプリンティングを取り上げ、具体的な研究内容としては、レトロトランスポゾンに由来する哺乳類特異的遺伝子であるPeg10, Peg11/Rtl1, Sirh4-6、Sirh9 の生物学的機能の解明、ゲノムインプリンティングの記憶のリプログラミングにおける脱メチル化の解析を推進している。解析は順調に進んでおり、Peg11/Rtl1については、これまで報告した胎盤の血管内皮細胞の維持機能だけでなく、胎児側の血管系の保持にも重要であり、これが胎児期中期致死、新生児期致死などの原因であることを示唆する結果を得ている。ヒトPEG11/RTL1は染色体14番の父親性2倍体、母親性2倍体症候群の原因遺伝子であり、今回の結果は、PEG11/RTL1をターゲットとした治療戦略につながると考えている。Sirh9 については新しいコンストラクトが完成し、KOマウス作製が進んでいる。哺乳類の発生機構には、DNAメチル化と脱メチル化によるエピジェネティック制御が重要である。しかし、脱メチル化が能動的なものか、受動的に起きるものかという議論に決着はついていない。われわれの解析からは、受精直後の雄性前核の脱メチル化は、メチルシトシンがヒドロキシメチルシトシンへ変換された後は、DNA複製に従った受動的メチル化が起きている可能性が高いことが明らかになった。一方で、始原生殖細胞におけるゲノムインプリンティング記憶の消去過程では、DNA複製によるものとよらない両者の脱メチル化反応が進んでいることが明らかに出来た。これはin vivo, in vitroを問わず、能動的脱メチル化を実証した初めてのものである。
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