研究課題
哺乳類の中でヒトを含む真獣類は、進化の過程でLTRレトロトランスポゾン由来の遺伝子群を獲得している。本研究計画では、これらの遺伝子のノックアウトマウスを用いた網羅的解析を推進し、昨年度までに胎盤形成や機能維持に必須なPeg10、Peg11/Rtl1、Sirh7/Ldoc1遺伝子について報告してきた。真獣類のもう一つの大きな特徴は高度に発達した脳機能である。Sirh11/Zcchc16はほぼGagの全体からなる遺伝子であるが、胎盤では発現せず、胎児期、成体期において脳での発現が見られる。この遺伝子のノックアウトマウスは注意力や衝動性、短期記憶などの認知能力に障害をきたすことを様々な行動実験から明らかにし、さらにマイクロダイアリシス法を用いた大脳皮質内における各種モノアミン量の測定から、ノルアドレナリン/ドーパミン比が有意に低下していることを明らかにした。このことから、Sirh11/Zcchc16は大脳におけるノルアドレナリン量の調節により、行動の制御に関わることを明らかにした。さらに、Sirh3/Ldoc1l、Sirh8/Rgag4のノックアウトマウスの解析を進め、それぞれ夜間行動の減少、プレパルスインピビション低下など、脳機能に関する機能を持つことを明らかにした。これにより、LTRレトロトランスポゾン由来の獲得遺伝子群が、胎盤だけでなく脳の進化に重要な役割を果たしたことを明らかにした。昨年度、ゲノムインプリンンティング疾患の一つである染色体14番父親性2倍体症候群(Kagami-Ogata Syndrome)が難病指定されたが、その主要原因遺伝子であるPEG11/RTL1は胎盤だけでなく、胎児の成長に重要な働きをすることを、モデルマウスの解析から明らかにし、実際に異常を示す臓器群におけるPEG11/RTL1タンパク質の存在を確認した。これらの基礎的データの蓄積により、アンチセンスRNAを用いた本疾患の治療法の開発は実現性を帯びてきたと考えている。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 5件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (15件) (うち国際学会 2件、 招待講演 6件) 備考 (1件)
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