研究課題/領域番号 |
23224001
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研究種目 |
基盤研究(S)
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
中村 郁 北海道大学, -, 名誉教授 (50022687)
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研究分担者 |
岩崎 克則 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (00176538)
小野 薫 京都大学, 数理解析研究所, 教授 (20204232)
寺尾 宏明 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (90119058)
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キーワード | アーベル多様体 / モジュライ理論 / レベル構造 / 既約表現 / Witt 環 / 有限群スキーム / Floer理論 / ゼータ関数 |
研究概要 |
まず今年度出版論文について報告する.寺尾宏明は超平面Shi配置などの構造を決定した.小野薫はtoric多様体のmoment mapの逆像として現れるLagrangian torusのFloer理論の変形(bulk変形)について研究し,具体的な応用を示した.翁林は代数体の非可換ゼータ関数の研究から, 函数体に対し,二つの新型のゼータ関数を導入した.特に,純非可換ゼータ関数に対し,有理性と関数等式を証明した.大本亨は特異点を持つ代数多様体の Chern類理論(CSM類)を準射影的Deligne-Mumfordスタックおよびある種のArtinスタックまで拡張した. 田邊顕一朗は,微分体から構成される頂点代数上の加群と有限群の作用で不変な部分微分体から構成される頂点代数上の加群との間に対応があることを示した. 最後に,研究代表者の今年度の研究の進展について報告する.以下の目標について集中的に研究した. 悪い素点へのアーベル多様体のモジュライ空間のコンパクト化に拡張する. そのために,p-divisible群の有限部分群スキームを記述し,さらに,その上の非可換Heisenberg群スキームの既約表現(Schrodinger表現)を記述する必要があった.現在までに完成しているのは,わずかに1次元素数レベルの場合のみであるが、超特異楕円曲線のHeisenberg群スキームがWitt環上にArtin-Hasse exponetialを用いて記述できることが判明した.非可換有限群スキームの表現論は,世界的にも未開拓の分野であって,今回の結果は世界的にも最初の明示的な結果である.さらに、有限部分群スキームの2次元cohomologyの元を用いて,表現を構成できた.Heisenberg群スキームの重さ1の既約表現は、すべてこの方法で構成されると予想される.この既約,可約の判定が今後の課題である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アーベル多様体のモジュライ空間のコンパクト化について,Drinfeld レベル構造の高次元への一般化(の定義)ができたこと,有限部分群スキームのfppf 位相に関する2次元cohomology の元を用いて表現を構成することができたことは,今後の研究にとって大きな進展である.その意味で研究はおおむね順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
アーベル多様体のモジュライ空間のコンパクト化について,現在は具体例を中心に検討を続けている.これにより経験を蓄積して,最終的には一般的に抽象的な議論によって理論を完成したい.2013 年開催予定の3つ国際研究集会での連続講演,および、論文依頼が内定したので,本研究の遂行と並行して,具体例の詳しい記述も含めた入門,総合報告の論文を執筆することで,進行中の研究を補強することを考えていく.いくらか数論幾何学部門の強化をはかる必要があるが,研究は予定通りに進展しており基本的な点では,研究計画の変更は考えていない.
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