研究課題/領域番号 |
23224002
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研究種目 |
基盤研究(S)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
深谷 賢治 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (30165261)
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研究分担者 |
中島 啓 京都大学, 数理解析研究所, 教授 (00201666)
加藤 文元 熊本大学, 自然科学研究科, 教授 (50294880)
加藤 毅 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (20273427)
小西 由紀子 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (30505649)
入谷 寛 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (20448400)
五味 清紀 信州大学, 理学部, 准教授 (00543109)
三松 佳彦 中央大学, 理工学部, 教授 (70190725)
大仁田 義裕 大阪市立大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (90183764)
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キーワード | 幾何学 / ラグランジュ部分多様体 / ミラー対称性 / フレアーホモロジー / 深谷圏 |
研究概要 |
M. Abouzaid・小野薫・太田啓史・Y.-G.Oh氏と共同で,トーリック多様体のホモロジー的ミラー対称性を証明した.またラグランジュ部分多様体(と付加情報)がA無限大圏を生成するための十分条件をえた.これをスペクトル不変量などに応用する研究も行っている。(論文執筆中.) 高い種数のラグランジュ部分多様体のフレアー理論や,そのグロモフウィッテン不変量への応用を進めた.代数的準備(Involutive bi Lie infinity structureやそのループ空間のコホモロジーや巡回コホモロジーとの関係。チリバック-ラトシェフとの共同)、そのモジュライ空間への応用など。(論文準備中.) ラグランジュフレアー理論の基礎となる仮想ホモロジー類の理論の技術的細部について250ページの文献を制作し、公開した。(小野薫・太田啓史・Y.-G.Oh氏と共同)。現在これをより読み易くした、教科書的なものを制作すべく準備をすすめている。(座標変換が滑らかでありことを示す解析の細部や、定義域の安定化など。さらに、倉西構造のファイバー積や多価摂動の0点集合の三角形分割などについても議論を進める予定。) 群作用がある空間への擬正則曲線のモジュライ空間に同変倉西構造を与えるやり方の正確な細部について研究を進めた。(小野薫・太田啓史・Y.-G.Oh氏と共同)対角集合のラグランジュフレアーが量子コホロモジーと同形であるという以前証明した結果について、レフェリーの求めに応じて、コンパクトかに現れる小円がついた種数0の擬正則曲線のモジュライ空間について、正確な定義や倉西構造の構成についてより詳細を与えた。(小野薫・太田啓史・Y.-G.Oh氏と共同)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
トーリッック多様体のホモロジー的ミラー対称性の研究は数学的内容については以前に完成しているが、論文執筆は終わっていない。それは緊急に対応すべき種々の事柄が生じたためである。 特に、仮想ホモロジー類の理論の細部について、質問を受け、グーグルグループで議論解答した。質問をしたグループの態度は必ずしも友好的ではなく、この理論の基礎を研究者コミュニティーで確立するには慎重な対応を要する。その目的もあり、200ページを超える詳細な文献を制作し、グーグルグループで解答するとともに、ネットワーク上の論文サーバーで公開した。この内容に対して数学的な中身を含む異議はそれ以後でていない。 このようなことがおこった理由は、仮想ホモロジー類の理論が技術的に複雑であり研究者コミュニティーで浸透していないということがあげられ、普及が必要である。一方、このような質問が行われること自身、仮想ホモロジー類の理論の意義その応用可能性についての、研究者コミュニティーの理解が深まったことの現れと見なすことができ、丁寧に解答しそれを分かり易い形に直していくことで、研究者コミュニティーでの仮想ホモロジー類の理論の浸透をはかることが可能と思われる。 ホモロジー的ミラー対称性の研究には、仮想ホモロジー類の理論をもっとも適用が微妙な状況も含めて組織的に応用することが不可欠であり、上記のような研究はその基礎として理論的にも重要である。また、ホモロジー的ミラー対称性を深めるために行っている高い種数の境界付き擬正則曲線の研究においても、そのモジュライ空間の仮想ホモロジー類の構成と研究には仮想ホモロジー類の理論をもっとも適用が微妙な状況で適用する必要がある。 以上の理由で、研究は順調にすすんでおり、研究者コミュニティーでの理解についても順調に前進している。
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今後の研究の推進方策 |
仮想ホモロジー類の理論の基礎付けと、そのホモロジー的ミラー対称性への応用を平行して行う予定である。 深谷が組織委員の一人となって、Simons Center for Geometry and Physicsで、仮想ホモロジー類の理論の基礎付けについてのプログラムを本年度後半から始まる半期で行う予定であり。そこで、仮想ホモロジー類の理論の基礎に関する研究者コミュニティーでのコンセンサスが確立することを期待している。昨年度ネット上で発表した文献をもとに複数の書物を執筆する準備をすすめる予定である。一つは、比較的単純な場合に限定して、(関係分野の研究者を志望する)大学院生レヴェルで読める教科書であり、もう一つはもっとも一般の場合を扱うレファレンスとなる研究モノグラフ的な文献である。 もう一方で、ホモロジー的ミラー対称性の証明などに関わる研究も進めたい。現在、過去に執筆した論文3-4つ(合計500ページ)がレフェリー中あるいは出版まちの状態である。その一部は書き換えを求められていて、仮想ホモロジー類の基礎について慎重な対応が必要である。数学的な問題点はないので、問題は証明の記述法である。 Cielibak-LatschecとのInvolutive bi Lie infinity構造についての論文も本年度始めに共著者から改訂原稿が送られてきたので、もう一度チェックすれば完成するはずである。それを幾何学的にラグランジュ部分多様体のフレアー理論で実現する論文も執筆にかかれるが、それは、仮想ホモロジー類の理論の基礎付けと平行して進展させる。上記の理論のトーリック多様体などの場合により具体的に調べるプロジェクトは始まりつつある。 族のフレアーホモロジーの応用によるホモロジー的ミラー対称性の証明については、米国の若手の研究者等もすすめているようであり、今後密接に連絡を取りながら、進展させていきたい。
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