研究課題/領域番号 |
23224002
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
深谷 賢治 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 客員教授 (30165261)
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研究分担者 |
中島 啓 京都大学, 数理解析研究所, 教授 (00201666)
加藤 毅 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (20273427)
入谷 寛 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (20448400)
小西 由紀子 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (30505649)
加藤 文元 熊本大学, 自然科学研究科, 教授 (50294880)
三松 佳彦 中央大学, 理工学部, 教授 (70190725)
大仁田 義裕 大阪市立大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (90183764)
小野 薫 京都大学, 数理解析研究所, 教授 (20204232)
藤原 耕二 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (60229078)
赤穂 まなぶ 首都大学東京, 理工学研究科, 准教授 (30332935)
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研究期間 (年度) |
2011-05-31 – 2016-03-31
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キーワード | 幾何学 / シンプレクティック多様体 / ラグランジュ部分多様体 / フレアーホモロジー / ミラー対称性 / 深谷圏 |
研究概要 |
これまでの研究では,ミラー対称性研究に不可欠である擬正則曲線の方法の基礎付けに多くの時間を使った.擬正則曲線のモジュライ空間の研究の基礎付けには,深谷と小野が1996年に開始し,深谷 - Oh - 太田 - 小野の書物でより発展した,倉西構造と仮想ホモロジー類の方法が用いられている. 倉西構造と仮想ホモロジー類の方法を徹底的に見直し,その詳細を整理することが望ましく,ホモロジー的ミラー対称性予想の証明にもそれが重要で,さらに,連接層の導来圏と深谷圏のカテゴリー同値を超えて,ミラー対称性予想を深化させるためにもこれは不可欠である.さらには,仮想ホモロジー類の方法の特にドラームコホモロジーを用いるやり方は,場の量子論の繰り込み理論などの基礎付けと関わりが深いことが次第に明らかになっている.. また,(A)整数係数のフレアーホモロジーに関する論文を出版した.(B)トーリック多様体のミラー対称性に関する3番目の論文を改訂した.これに関しては,上記の(4)-(7)に関わる細部に曖昧な点があったので,そこを書き直した.なお,同論文につては,Asterisque誌からアクセプトされていたが,書き直したものを再提出している.(C) 反正則対合の不動点であるラグランジュ部分多様体のフレアーホモロジーについての論文をレフェリーの求めに従って改訂した. (D) ホモロジー的ミラー対称性と古典的ミラー対称性の関係について,種々の進展があった. (E) 定値写像の摂動とString topologyやChern-Simons摂動理論の関係について進展があった. (F) 斉藤恭司らの原始形式との関係について,Higher residueやprimitive formなどをホッホシルドホモロジーや巡回ホモロジーの言葉で理解する上で進展があった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2012年にその成果を250ページ程度の文献K. Fukaya, Y.-G. Oh, H. Ohta and K. Ono, Technical details on Kuranishi structure and virtual fundamental chain, arXiv:1209.4410.としてまとめ,アーカイブ上で公表している.この文献では,従来詳細を発表していなかった,擬正則曲線のモジュライ空間の構成で出てくる,貼り合わせ写像の指数オーダーの評価,の証明の完全な詳細を初めて与えた.これにより,倉西構造の座標変換の微分可能性について詳細な証明が与えられたことになる.(その証明は2009年に出版された書物では,5-10ページ程度の記述を与えていたが,今回より詳細な証明を与えた.)この微分可能性については,何人かの研究者からの指摘が,公表されていたようであるが,この文献の発表以後,そのような問題の指摘はほとんどなくなった. 2013年2014年も引き続き,倉西構造と仮想ホモロジー類の方法の見直しと整理を続けている.上記文献では,主に,単独のモジュライ空間とその仮想ホモロジー類を扱い,その細部を与えているが,ラグランジュ部分多様体のフレアー理論のためには,モジュライ空間のシステムをあつかい,それがさだめる対応(correspondence)をチェインレベルで構成し研究する必要がある. 2009年に出版した本では,特異ホモロジー論をもちいて,これを実行した.該当部分は100ページ以上有り,相当に詳細にわたって記述しているが,シンプレクティック幾何学研究者のコミュニーティーの現在の理解の状況をみると,これでも不足しているようである.
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今後の研究の推進方策 |
(1)現在制作中の「チェインレベルの議論」を中心とした,「倉西構造とその摂動」に関する文献を完成させるのが最初の目的である.それは近い将来完成する.(2)その続編として,「忘却写像の理論」を記述し,その応用を完全な細部を書いた文献を制作する.(3) 多価摂動の0点の3角形分割を論じ,それをもとに特異ホモロジーで仮想ホモロジー類を定式化する文献を制作する.(4) (1)(2)(3) とすでにネット上で発表済みのものを合わせたものを編集し,書物,教科書,論文などとして出版する.(5) 群作用がある場合に,擬正則曲線のモジュライ空間の倉西構造にも群作用が遺伝するということの証明の詳細を書いた文献を制作する.(6) (1)-(4)で詳細を執筆発表する一般論をさらに,擬正則曲線の広い範囲で応用する.(7) 円板より一般の場合をあつかったラグランジュフレアーホモロジーの理論の一般化を完成する.(8)higher residueやPrimitive form、good sectionなど,斉藤恭司の理論のより進んだ部分をランダウ-ギンスブルグB モデル側においた,トーリックAモデルとランダウ-ギンスブルグB モデルのミラー対称性を確立する.(9) Abousaidと深谷,Oh, 太田,小野の共同研究である,トーリックAモデルとランダウ-ギンスブルグB モデルのホモロジー的ミラー対称性の証明に関する論文の完成. (10) Cielibak-Fukaya-Latschevによる,Involutive bi Lie infinity構造についての論文を完成する.
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