研究課題/領域番号 |
23224006
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
仲澤 和馬 岐阜大学, 教育学部, 教授 (60198059)
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研究分担者 |
谷田 聖 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 先端基礎研究センター, 研究員 (00360587)
肥山 詠美子 独立行政法人理化学研究所, 仁科研究センター, 准主任研究員 (10311359)
渡部 豊喜 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 技術専門員 (20402422)
高橋 仁 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 准教授 (60353372)
星野 香 岐阜大学, 教育学部, 非常勤講師 (70022738)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ダブルハイパー核 / エマルション / 全面スキャン / SSD / 少数多体計算 |
研究実績の概要 |
原子核乾板関係では,前年度の全面スキャンで発見した二つのシングルハイパー核を放出する事象を解析し,グザイ粒子が窒素原子に核力で強く結合した,世界初のグザイハイパー核(「木曽イベント」と命名)であることが分かり,論文(PTEP)として出版し,新聞でも紹介された。製作した乾板の神岡鉱山内での宇宙線やガンマ線の被ばく状況のモニターを続け,2年程度で前の実験の最大被曝に対応するため,ビーム照射量を削減することなく実験できることが判明した。全面スキャンの検出効率の向上に取り組んだが,格段に向上したとは言えない。一方で,グザイ粒子候補を全自動追跡する手法は,時間の短縮が必要ではあるが,ひな形ソフトができあがった。大量現像のための乾板支持枠の設計が完了した。 25年度に組み立てたシリコン検出器のノイズ対策を実施した後に,東北大学理学部の加速器を用いて2枚組みによる性能評価,およびエマルションムーバーとの干渉実験を実施した。その結果,シリコン検出器の一部に補修が必要なことがわかった。エマルションムーバーとのかみ合わせ試験では,干渉があることがわかった。 KURAMAスペクトロメータについては,電磁石や検出器についても準備が整い,実験エリアへの設置を待つ状態まで来た。 質量数が40くらいまでのシングルラムダハイパー核の構造をAMD法で研究を進めた。超変形原子核とそれにラムダ粒子を付加した場合のハイパー核の構造変化は少ないが,エネルギーの増加とハイパー核の基底状態のエネルギー増加が異なることを突き止めた。このことは,ダブルラムダハイパー核におけるエネルギーの増減にも大きく影響を及ぼすことが考えられる。また,同時に中性子星の状態方程式を研究し,ラムダ-ラムダ間相互作用のodd stateの情報が必要不可欠であることを指摘した。 グザイ原子が発するX線測定用ゲルマニウム検出器の装着が成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
原子核乾板関係では,ダブルハイパー核やグザイハイパー核の核種を可能な限り単一に同定するために,娘粒子となる水素からホウ素までの原子核を乾板に照射し,飛跡の「濃さ」から娘粒子の核種を決める実験が,これまでの準備をもとに,理化学研究所で採択された。この実験は平成26年12月に照射予定であったが,電気代不足のため平成27年度に先送りされた。ビーム照射した乾板を一気に大量に現像するタンク内を,一様に現像液を循環させるための装置開発が残っている。また,全面スキャンの検出効率の向上も必要ではあるが,おおむね順調に進んでいる。個々の装置の準備は順調に進んでいるものの,平成25年に起きたハドロン実験施設からの放射性物質漏えい事故の影響により,施設の実験プログラムが中断しているため,現場への設置が出来ない状況が続いている。現在(平成27年4月),ハドロン実験施設において試験用にビーム供給が再開された。我々のビーム照射は,平成28年3月ごろの可能性が示されている。 理論面では比較的重いシングルラムダハイパー核から中性子星の状態方程式の構築まで,研究はおおむね良好である。
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今後の研究の推進方策 |
原子核乾板関係での課題は,乾板の大量現像,全面スキャンにおける検出の高効率化,グザイ粒子候補飛跡の全自動追跡プログラムの最適化があげられる。ダブルハイパー核の核種同定のための娘粒子を同定する実験が平成27年7月に予定されており,照射,解析を進める。これと並行して,かつて照射済みの乾板で,全面スキャンを精力的に進める。 シリコン検出器の改修を行い,デリケートな箇所を保護剤で固定するなどの対策をとる。また,エマルションムーバーの干渉ノイズ対策を検討・実施するとともに本実験に向け検出器を完成させる。 ハドロン実験施設の運転再開とその後のKURAMAスペクトロメータの設置を,可及的速やかに行えるよう,施設に働きかけていく。そのためにも,今後ハドロン施設で進行する実験(E13実験)から我々の実験への移行に全力を尽くす。 平成26年度にグザイハイパー核が実験で発見されたことを受けて,理論面では14N-Ξハイパー核を3α+deuteron+Ξの5体問題における研究の必要性がでてきたため,平成27年度はこの研究に集中する。
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