研究課題
本研究の目的は、世界をリードする超強磁場中性子回折とX線分光により超低還元温度下の磁場誘起量子相を探求することである。本年度は、以下の成果を得た。1. URu2Si2の強磁場磁気秩序が面内非整合磁気秩序であることを決定した。これは30年以上謎であった同物質の強磁場下の基底状態を定めるという画期的な成果である。2. 1.9K, 40Tまで測定出来る軟X線測定装置の立ち上げに成功し、Ce系のメタマグ転移物質等の研究に応用した。この結果は、超低還元温度(0.035)において、基底状態の性質を研究出来る手法を確立するもので、XMCDの利用に新しい領域を切り拓いた。3. 中性子およびX線等を駆使して、フラストレートした擬1次元鎖beta-TeVO4において、スピンネマテイック相を見いだした。この物質はS=1/2の系として、ネマテイック相の存在を明確に示した稀な例である。4. X線自由電子レーザーとパルス磁場を用いて微弱な超格子反射を測定する手法を世界で初めて確立し、高温超伝導体YBCOの磁場誘起電荷密度波の波数に新しい成分があり、強磁場中で電荷秩序が3次元性を持つ事を明らかにした。これは、フェルミ面の変化や対称性の変化を伴う電子相転移を、超強磁場下で回折実験により決定する手法が確立された事を意味し、画期的な成果である。5. マルチフェロイック物質LiNiPO4において、磁場中の中性子回折実験により、磁気構造、異方性が磁場依存する系での分極機構について明らかにした。6. Eu系の磁場誘起価数転移において、初めて飽和に到る全ての過程の価数とサイト毎の磁化を定量的に決定する事に成功し、磁場誘起価数転移理解の標準的な手法を確立した。これらの成果を通して、超強磁場中性子回折とX線分光におけるこれまでの優位性をさらに延ばし、今後も、世界をリードする基盤を確立する事が出来た。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 国際共同研究 (5件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件、 謝辞記載あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (20件) (うち国際学会 6件、 招待講演 5件) 備考 (4件)
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