研究課題
(1) 花崗岩質表層大陸の10倍以上の大陸地殻がマントル遷移層に存在する我々が提案した大陸三層モデルは、もとは第一原理計算に基づく密度計算であったが、本研究提案によって、マントル遷移層の下部(520-660㎞深度)に花崗岩質物質が、地殻上部の花崗岩の総量の7倍存在する(第二大陸)ことが、地震波の速度平均(PREM)から導かれ(Kawai et al., 2013)、駒林グループの超高圧実験による研究結果はこの結論をサポートしている(論文準備中)。超高圧実験と第一原理計算による分析から、マントル内部に滞留する花崗岩質物質の総量は本研究提案時の予測の12倍を超えて存在するのは確実だと考えられ、全地球規模での第二大陸の広域分布図を本提案研究の終了までに示す予定である。(2) 第二大陸の自己発熱効果マントル遷移層で花崗岩質物質が重力的に安定化すると、水平方向の移動により第二大陸には離合集散が起きると予想される。詳しい計算から、超大陸の分裂と移動、及び再融合した超大陸の運動史を18億年前に遡り、第二大陸の発熱効果で解説した(千秋・Santosh, 2011)。次の課題はマントル対流の数値計算二次元モデルに発展させることで現在進行中である。(3) 過去の構造浸食の定量的評価日本列島の地質図、及び、地質構造発達史から、過去6億年間のプレート沈み込み史のうち、付加体の形成時間は全体の1/3に過ぎず、残りの2/3は付加体が欠如する時代であることが判明した(丸山他、地学雑誌、2011,2012)。造山帯の構造発達史の中に構造浸食を組み込んだ研究は、前例がなく、構造発達史研究における世界の先駆けとなるもので、学術的影響は大きい。
2: おおむね順調に進展している
現在までの達成度を本研究で提案された班ごとに要約した。表層地質(丸山):いつ、どこで大規模な構造浸食が起きたのか、その量的な見積もりの手法の開発を継続中であり世界の地質に基づいた造山帯の成長曲線の論文化を進めている。超高圧実験(駒林):大陸地殻構成物質の『その場観察』高温高圧X線回折実験を行い、CaSiO3ぺロブスカイと、 SiO2ステイショバイト、NaAlSiO4カルシウムフェライト(CF)相について、圧力―温度―体積状態方程式を構築した。構築した状態方程式は、順次投稿予定である。地球化学(横山):ジルコンの年代測定を高精度・高分解能で迅速に分析する技術の開発をめざし、液中レーザーアブレーション法の開発を目指した。しかし、1試料あたり10時間以上のレーザー照射が必要であることが分かり(Okabayashi et al., 2011)、方針をマイクロドリル法に変更した。ダイヤモンドビットを利用した新手法の開発に成功した。岩石学(大森):英国、ニューファンドランド、スコットランド、ヒマラヤ山脈地域の系統的な試料の収集と年代測定を行い各地域の地質構造発達史に関する一連の論文を書いた。地震学(Zhao):東北日本で現在進行中の構造浸食と流体の移動に焦点を当てた研究を進め、東アジアの直下のマントル遷移層の最上部410㎞に起源をもつ含水プルームがアジア内部のホットスポット火山の原因であることを明らかにした(Wei et al., 2012; Zhao et al., 2011)。数値計算(千秋):平均的な花崗岩組成を使って、放射性元素による自己発熱効果を計算し、410㎞深度起源のプルームによる超大陸の分裂が起きるとするモデルを提唱した(千秋・Santosh, 2011)。
本研究計画の中で、残された課題は、地表から消失した花崗岩地殻の総量の定量的な推定と、それらが、現在マントル深部のどこに、どれだけ分布するのか、の観察である。相転移による効果は、駒林によって実験はほぼ終わったので、次は、地震学から、第2大陸の物性に基づいて、この目的を完遂することに焦点が絞られた。そこで、新しい手法として、26億年前の世界的不整合を利用して、現存する35個の太古代地塊の全てから26億年前の砂岩を収集して、ジルコンの年代頻度分布を調べ、26億年前当時の大陸の年代頻度分布を調べることを思いついた。既に研究を開始し、予察的結果を報告した。不整合の時代を10億年前と6億年前にも広げ、同様の研究を推進し、表層から消失した花崗岩地殻の時代と量の推定を進める。
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すべて 雑誌論文 (30件) (うち査読あり 30件) 学会発表 (28件) (うち招待講演 1件)
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