研究分担者 |
齋藤 晴彦 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 助教 (60415164)
矢野 善久 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 特任研究員 (90598989)
森川 惇二 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 助教 (70192375)
小川 雄一 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 教授 (90144170)
古川 勝 鳥取大学, 大学院・工学研究科, 准教授 (80360428)
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研究概要 |
天体磁気圏は宇宙に遍在する典型的な構造でありながら,そこに閉じ込められるプラズマには多様な構造や運動が現れ,未解明のものが多い.とくに密度が高い内側へ向けて粒子が逆拡散し「自発的な閉じ込め」が起こることが知られており,そのメカニズムが解明されるならば,高性能の核融合プラズマ閉じ込め,とりわけD-3Heの燃焼を可能にする先進的核融合の研究に道が開かれる.RT-1実験装置は真空装置の中で磁気浮上させた超伝導マグネットをもちいて天体磁気圏を模したプラズマの自発的閉じ込めを行うことができる.本研究計画は,RT-1においてイオンの直接加熱を行い,イオン圧力の上昇とそれによって生まれる渦動現象を解明しようとするもので,これによって先進的核融合の科学的可能性を明らかにすることを目的としている. 初年度であるH23年度は,計画の主要なテーマであるプラズマのイオンサイクロトロン加熱(ICH)のための基礎技術開発と予備実験を行った.アンテナを高磁場側に設置し,スローモードで電磁波を入射し,その伝播特性を明らかにした.その結果を理論解析と比較し,アンテナ近傍の高磁場側でプラズマ密度上昇させる必要があることが明らかになった.実験的スケーリング則に基づき,高磁場側に電子サイクロトロン共鳴点をもつ8.2GHz電子サイクロトン波入射系の増力を行うことにした.そのためのマイクロ波入射系とサーキュレータを増力・改造した.またイオンエネルギー計測器を開発した.これらの基本的な装置開発を経て,イオンのICH加熱を確認する段階に達した(未だプラズマ端部の計測に限られているが,イオン温度が5eV程度から30eV程度まで加熱された). 一方,理論研究では,逆拡散によるプラズマの自発的閉じ込めを,磁化した粒子のハミルトン力学の葉層構造として説明することができた.この理論は更に時空の非正準性・特異性の理論に一般化され,渦を時空の構造としてみる新しい視点が開かれた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
磁気圏型プラズマのイオンサイクロトロン加熱は,前例がない挑戦であり,高周波電力を装置中心部の狭い空間から入射するための高度な技術の開発を必要とする.当初予定した加熱効率を得るためには電子密度を高め,アンテナとプラズマの結合を高める必要があることが明らかになり,このための装置開発に時間を要した.H23年度の計画は遅れたが,H24年度にはイオンの加熱を確認できる段階に到達し,概ね当初の予定に到達している.
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今後の研究の推進方策 |
H24年度にはイオンサイクロトロン加熱を確認する段階に到達できたので,今後は概ね当初計画のとおりにイオン加熱効果の最適化を進め,イオンの高温化とそれによるプラズマの渦構造の変化に関する研究を進める.ただし,地震の頻発化のために超伝導マグネットの磁気浮上を制限する必要が生じたため,磁気浮上を行わない条件下でプラズマの密度を高くする方策を探求したい.このために,H24年度の計画を一部変更してH25年度に繰り越し,新たな電子加熱系の開発を行うことにした.
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