研究課題/領域番号 |
23224014
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
吉田 善章 東京大学, 新領域創成科学研究科, 教授 (80182765)
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研究分担者 |
西浦 正樹 東京大学, 新領域創成科学研究科, 准教授 (60360616)
川面 洋平 東京大学, 新領域創成科学研究科, 助教 (80725375)
小川 雄一 東京大学, 新領域創成科学研究科, 教授 (90144170)
高瀬 雄一 東京大学, 新領域創成科学研究科, 教授 (70292828)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 渦 / 非正準ハミルトン力学 / 磁気圏型プラズマ / 逆拡散 / 自己組織化 / イオンサイクロトロン加熱 / 先進的核融合 / 階層構造 |
研究実績の概要 |
本研究は,自然界において自発的に形成される天体磁気圏プラズマの自己組織化メカニズムと内部構造を明らかにすることを目的とした実験・理論の総合的なプロジェクトである,第4年度目にあたるH26年度には,プラズマの内部構造と粒子輸送現象を解明する実験およびイオンの圧力効果を調べるためのイオン直接加熱の実験を行った.理論面では,プラズマのトポロジー束縛に関する幾何学的研究と数値シミュレーションを行った. H26年度の実験研究の主要な目標であったICHによるイオン加熱に関しては,依然としてプラズマとアンテナとの結合が十分でないことが明らかになった.そこでアンテナの構造を抜本的に変えて,実験を開始した.また,新しいアンテナ構造におけるイオンサイクロトロン波伝播と吸収特性を数値解析で調べて,昨年度開発した高周波電場計測器を用いた実験との比較を行っている.プラズマ中のイオン温度分布の計測からは,イオン温度に顕著な異方性があることが明らかになった.これは天体磁気圏の放射帯(バンアレン帯)における観測に酷似しており,磁気圏の自己組織化メカニズムを実験的に研究するうえで極めて有用な情報をあたえている.われわれが理論的に提唱している内向き拡散に伴うベータトロン加速の効果であると考えられ,プラズマの密度や不純物温度との関係をつめて,分析中である. 理論研究では,プラズマの自己組織化理論を実験と比較するための数値シミュレーションを行い成果をあげた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
プラズマ中のイオン温度分布の計測を通じて,イオン温度の非等方性が粒子輸送の重要な帰結であることが明らかになった.これは,放射帯状の構造が自己組織化するメカニズムを明らかにする上で極めて重要な発見であり,当初の予想を超える成果であったといえる.昨年度までに開発した粒子エネルギー計測器を用いた実験のデータも得られており,プラズマの内部構造の解明は相当程度進んでいる.一方,イオン加熱の実験では,プラズマとアンテナとの結合に問題があることが明らかになったので,これを改善する研究を進める必要がある.プラズマ中の高周波電場を直接計測する測定器を用いた精密な実験を行う.本研究計画の中核的な課題についてデータが得られており,概ね当初の予定に到達している.
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今後の研究の推進方策 |
H28年度は本研究計画の最終年度であることから,これまで得られた実験および理論研究の成果を総合的に総括し,研究のまとめと成果の報告に力をいれる予定である.プラズマの内部構造の実験的解明および理論に関しては予想を超える成果が上がっており,今後は実験と理論をつき合わせる研究を行う予定である.とくにプラズマ中の流れ場の構造と生成メカニズムを運動論と流体描像を統合する物理的理解を確立することを目指す.そのために,流れ場の計測にも力を入れる.イオン加熱に関しては当初期待された成果が得られておらず,プラズマ中の電界の詳細な分析を中心的な課題に据えて,実験を継続する計画である.
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