研究課題/領域番号 |
23225002
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
山本 尚 中部大学, 総合工学研究所, 教授 (20026298)
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研究期間 (年度) |
2011-05-31 – 2016-03-31
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キーワード | 分子性触媒 / 選択的合成 / スーパー・シリル基 / アルドール反応 / ケイ素ルイス酸 / フロー型反応 |
研究概要 |
本研究の平成25年度は、(1) 我々の開発したスーパー・ブレンステッド酸を用いてスーパー・シリル基を鍵とする高次立体選択的合成の開発、(2) 高次選択的高活性複合酸触媒の開発と(3) フロー型反応システムの開発を目的に研究を行った。その詳細を以下に示す。 (1) 微量のブレンステッド酸触媒による嵩高いスーパー・シリル基を用いた全く前例のない逐次に反応が進行する分子内アルドール反応と分子間アルドール合成を組み合わせた新規合成プロセスの開発を行った。この反応は分子内にスーパー・シリル・エノール・エーテルを2つ有する基質を用いることで実現する。スーパー・ブレンステッド酸を触媒としてジシリル・エノール・エーテルとアルデヒドとの反応を試みたところ、反応は速やかに進行した。このとき完全な立体制御が行われ、3位と5位にシリルオキシ基を有した6員環アルデヒドを得ることができた。このとき、不斉点を一挙に4つも制御したことになる。同様に5員環、7員環アルデヒドの合成にも成功した。 (2) ケイ素ルイス酸を用いる重要な有機合成反応は数多く知られている。しかしながらそのような不斉ケイ素ルイス酸触媒を向山アルドール反応に適応する場合、系中で異なる二種類のケイ素ルイス酸が生じる可能性があり、不斉反応の実現のためにはこのケイ素移動を制御する必要があった。我々は詳細な検討の結果、非常に嵩高いトリストリメチルシリルシリル(TTMS)基を用いた場合にケイ素移動を完全に押さえることを成し遂げた。すなわちキラルの嵩高いスーパー・シリルルイス酸触媒を用いて不斉合成を進めることが可能となったことを意味する。 (3) フラスコ反応より簡便なフロー型反応システムの開発を目指す。触媒とシリカゲルを混ぜ合わせたものをチューブに詰めるだけの簡便フロー型反応システムを構築する。すでにエン反応やアルドール反応などの反応が速やかに進行することを見いだした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究は良好な結果が得られ、順調に進展していると考えられる。 (1) 嵩高いスーパー・シリル基を用いた全く前例のない逐次に反応が進行する分子内アルドール反応と分子間アルドール合成を組み合わせた合成プロセスの開発では、多くの基質で高い選択性を得ることができている。加えて、プロトン化/分子内アルドール反応、ハロゲン化/分子内アルドール反応への応用も可能となった。 (2) ケイ素ルイス酸の開発においても不斉発現に重要なケイ素移動の完全な制御を達成した。不斉反応への応用に向けて検討を行っている。 (3) フロー型反応システムもいくつもの反応が簡便な操作で速やかに進行するまでに達している。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降さらなる発展を目指している。具体的には、 (1) 我々はこれまでに微量のブレンステッド酸触媒による嵩高いスーパー・シリル基を用いた全く前例のない逐次に反応が進行する分子間反応と分子内反応の2連続反応による新規合成プロセスの開発に成功した。得られた生成物は、環状アルデヒドで不斉点を3から5も有している。このユニークな骨格合成法を天然物や生理活性物質の合成へ応用する。エノール・シリル・エーテルのα位に酸素原子を有する基質を用いて酸素原子が連続するアルドール反応を行う。得られた生成物は、核酸や糖への応用に展開できると考えられる。 (2) ケイ素ルイス酸を向山アルドール反応に適応する場合、系中で二種類のケイ素ルイス酸が生じる可能性があり、不斉反応の実現のためにはこのケイ素移動を制御する必要がある。我々はこれまでに、非常に嵩高いトリストリメチルシリルシリル基を用いた場合にケイ素移動を完全に制御できることを成し遂げた。この基礎実験の結果を考慮し非常に嵩高いシリル基を有した不斉触媒を合成し、これを用いた触媒的不斉アルドール反応を検討する。 (3) 我々はすでにエン反応やアルドール反応等の反応がフロー型反応システムを用いることで簡便かつ効率的に進行することを見いだしている。今後は、これらの知見に基づき、いくつかのチューブを組み合わせて、多段階反応のシステムを確立する。これにより、効率的なフロー型反応システムの機械化を目指す。
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