研究課題/領域番号 |
23225005
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研究種目 |
基盤研究(S)
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研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
齋藤 軍治 名城大学, 総合研究所, 教授 (40132724)
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研究分担者 |
吉田 幸大 名城大学, 総合研究所, 助教 (10378870)
伊東 裕 名古屋大学, 大学院・工学研究科, 准教授 (10260374)
岸田 英夫 名古屋大学, 大学院・工学研究科, 准教授 (40311633)
大塚 晃弘 京都大学, 低温物質科学研究センター, 助教 (90233171)
前里 光彦 京都大学, 大学院・理学研究科, 助教 (60324604)
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キーワード | 機能性有機物質設計 / スピン三角格子 / 量子スピン液体 / 超伝導 / フラーレン / 電界効果トランジスタ / 一軸歪圧 / 非線形光学 |
研究概要 |
課題1)新規有機スピン三角格子系の開発 新規k型ET塩の開発に成功した。スピン三角格子の異方性t'/tは1より大きく(1.44)、1.8GPaまで半導体的挙動を示した。逆ペロブスカイト構造をもつTSF塩やtrimethylpiperaziniumならびにbis(benzene)chromium 陽イオンを用いたC_<60>系三角格子層状結晶の開発にも成功した。また、金属的挙動を示すスピン三角格子系(MDABCO^+)(TPC)(C_<60>^-)の嫌気下でのラマン散乱測定を行った。現在の測定分解能の範囲においては、電荷分離を示唆するラマンピークの分裂は観測されず、全温度領域にわたり単一価数状態であることが示唆された。さらに、同位体置換した^<13>C_<60>を用いて上記C_<60>三角格子伝導体を合成し、多結晶試料の^<13>CNMR測定を行った。スピン-格子緩和率の温度変化から、4Kまで磁気相転移を示さず、金属状態を保つことなどを明らかにした。本年度導入した無冷媒超伝導磁石を用いたNMRおよび各種物性評価システムを構築し、炭酸イオンを含むハニカム格子熱電材料の物性評価を行った。その結果、強いイジング性と遍歴性を併せ持つ新しいスピン軌道液体状態を見出した。 課題2)圧力印加による電子状態制御 小型キュービックアンビル低温高圧発生装置を導入し、8GPa・4Kまでの高圧・低温下での測定が可能な伝導度測定装置を立ち上げた。これを用いた圧力誘起超伝導などの物性探索を開始した。超伝導体β-(BEDT-TTF)_2IBr_2における一軸歪圧の圧縮方向依存性がβ-(BEDT-TTF)_2I_3の傾向と概ね一致しているごとが分かった。 課題3)電界・光・磁場によるキャリア注入と状態制御 導電性高分子RR-P3HTについて、イオン液体をゲートに用いたトランジスタを作製し、室温での低電圧トランジスタ駆動と低温での可変領域ホッピング伝導を見出し、振る舞いが電気化学ドーピングモデルで理解できることを示した。また、TCNQを用いたイオン液体ゲートトランジスタを試作し、性能評価を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新規スピンフラストレート候補物質(k型ET塩、ペロブスカイト型TSF塩、C_<60>三角格子系など)の開発に成功し、これらを手掛かりにさらなる新規物質の開発にも着手している。特に、単結晶X線構造解析装置を導入したことにより、物質開発のスピードが格段に進歩した。本年度導入した小型キュービックアンビル低温高圧発生装置や無冷媒超伝導磁石を組み込んだ伝導度やNMR測定装置などの立ち上げも完了し、電子物性解析や圧力効果を調べるための環境も整いつつある。また、低温プローバーを導入し、効率的なFET特性評価にも着手している。2012年1月(名城大学)と2月(京都大学)には海外の研究協力者を交えた研究会を開催するなど、研究者間の相互理解・意思統一の深化にも努めている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度開発した新規スピンフラストレート候補物質の関連物質を系統的に開発すると同時に、Cu(II)上のS=1/2スピンを利用したスピンフラストレート金属錯体の開発にも着手する。これら新規物質の電子基底状態を明確にするとともに、電子物性の圧力効果や光学特性を詳細に検討する。研究者間の情報交換により、有機スピンフラストレート系における基礎的な光学スペクトルのデータやその理解が不足している点が明確になったため、申請時に予定していた磁場中顕微光学クライオスタットではなく顕微紫外可視近赤外分光光度計を購入する。
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