1) 本光電変換系における光電流発生のメカニズム解明 これまでの研究により、水が電子源となって光電流が発生することを明らかにした。メカニズムは、プラズモン増強場において局所的に電荷分離が誘起され、多数の正孔が酸化チタンの表面準位に捕捉されることにより水の酸化反応が円滑に進行すると考察した。平成27年度は、面方位によって酸化チタンの表面露出度が変化するチタン酸ストロンチウム基板上に金ナノ構造を作製し、光電変換効率の面方位依存性を検討した。その結果、100%酸化チタン表面が露出している100面が最も高い光電変換効率を示し、水の酸化反応が効率的に進行していることが明らかになった。また、ラマン分光においても100面が最も中間体の量が多く観測され、酸化チタン表面が光電流発生に重要な役割を果たしていることを明らかにした。 2) 太陽光を有効に捕捉・局在化させる光アンテナの設計と創成 平成26年度までの研究から、強結合やファノ効果により高い光電場増強を示す金属ナノ構造の設計について明らかにしてきた。平成27年度は、金ナノロッドを基板上に平行に並べて、さらにその先端にロッドの側面を近接させたdolmen型構造の光アンテナ特性を検討した。近接場分光特性を検討したところ、強い相互作用に基づいてdolmen型構造が一体となり、結合性と反結合性バンドからなるプラズモン混成状態が得られた。このプラズモンの混成状態は、ファノ効果よりも高い光電場増強効果を示すことが明らかになった。 3) 全固体プラズモン太陽電池の構築 平成26年度に引き続き全固体プラズモン太陽電池の開発を行った。平成27年度は特にパルスレーザー堆積法を用いて、結晶性の高い酸化チタンや酸化ニッケルを堆積させることにより、透明な全固体薄膜プラズモン太陽電池を構築した。特筆すべきは、結晶性の向上によりフィルファクタが増大し、効率が大幅に向上した。
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