研究課題/領域番号 |
23226001
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研究種目 |
基盤研究(S)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
鈴木 義茂 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (50344437)
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研究分担者 |
久保田 均 (独)産業技術総合研究所, ナノスピントロニクス研究センター, センター長・主任研究員 (30261605)
今村 裕志 (独)産業技術総合研究所, ナノシステム研究部門ナノ構造物性理論グループ, 主任研究員 (30323091)
白石 誠司 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (30397682)
水落 憲和 大阪大学, 基礎工学研究科, 准教授 (00323311)
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キーワード | スピントロニクス / 磁気共鳴 / ダイオード / スピントルク |
研究概要 |
1.高性能スピントルク発振器の研究 (a)発振線幅の原因究明:短い時間間隔で発振スペクトルを連続的に取得し,発振スペクトルの時間変化(スペクトログラム)を測定できる測定システムを構築した。これを用いてスペクトルの解析を行ったところ,発振スペクトルが時間とともに変動し,1つのピークが2つに分離し,再結合する様子が確認できた.このような発振スペクトルの変動がスペクトル線幅の主な原因の一つと考えられる. (b)結合発振器アレイの作製:従来の微細加工プロセスでは素子サイズが100nm以下になると再付着の影響でリフトオフが困難になり素子ができないという問題があった.そこで,微細加工プロセスのエッチングプロセスの条件を種々検討した結果,素子作製の歩留まりが大幅に向上した.これによりアレイ素子の作製上の問題の一つが解決された. (c)超50GHz発振測定法の開発:結合強度、磁性層数を系統的変えた連続膜試料を作製し、Radboud大のグループのポンププローブ分光装置により超20GHzのスピン波モードの測定に成功した。 2.超高感度磁場センサーの研究 マイクロマグネティクス理論計算の結果、我々の素子では大角発振モードが励起されていることが確認された。また、計算において発振の揺らぎが見いだされた。 3.超高感度スピントルクダイオードの研究 (a)低抵抗で磁気抵抗比が大きく、磁気異方性の制御されたトンネル磁気抵抗素子を開発した。このことにより半導体の検波感度を超える素子を実現した。ダイオード信号およびノイズの理論式を得た。 (b)磁性ナノ粒子の磁気共鳴をスピントルクダイオード効果により検出するとに成功した。 (c)非磁性体中のスピンの制御:強磁性共鳴下でスピントルクを制御することで非磁性材料にスピン注入するスピンポンピング法がスピン波スピン流だけでなく通常の純スピン流も生成できることを実験的に見出し、従来困難とされていたp型Siを介した室温スピン伝導に世界で初めて成功した。ダイヤモンドの電気特性を測るため、オーミック接触になるTi/Auによる電極作成と微細加工を行い、電極作製条件に関する知見を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
開始1年目にして、スピントルクダイオードにおいて半導体を超える検出感度を実現した。さらに、非磁性スピンの制御のためにSiを用いることにより、スピン波スピン流だけでなく、通常の純スピン流でさえもスピンポンピングで生成できるという、従来にはなかった発想に至り予想以上の進展があった。
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今後の研究の推進方策 |
従来の研究の進め方で問題ない。 発振素子:種々の試料を用いた発振スペクトル測定および解析を行い,発振線幅の原因を明らかにする.また,今年度得られ実験結果に基づきアレイ化をすすめ,大出力,小線幅のスペクトルを有する発振素子の作製を目指す。磁場センサー:より高安定度な素子開発を続ける一方で、具体的な磁場測定の実験も開始する。 スピントルクダイオード:理論S/Nの解析式を示し、性能限界を探る。 非磁性スピンの制御:スピンポンピングなどの共鳴手法を駆使することにより非磁性スピンの室温での制御を可能にする。
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