研究課題/領域番号 |
23226002
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
阪部 周二 京都大学, 化学研究所, 教授 (50153903)
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キーワード | 電子線回折 / レーザー加速 / レーザープラズマ / フェムト秒レーザー / 超高強度レーザー / 時間分解 / 電子顕微鏡 |
研究概要 |
物質の構造的(特に非可逆的)な動力学を単一原子運動の時間尺度で直接観察できるパルス電子線による超高速時間分解電子線回折法を確立することにより、物質科学に貢献する。本研究の具体的目的は単一パルスによる電子線回折像の撮像を実現し、超高速時間分解電子線回折法を実証することである。本目的のために必要不可欠なパルス電子線源として、超高強度極短パルスレーザー生成プラズマ中で加速される高輝度短パルス高エネルギー電子を利用する。高品位パルス電子線源生成のために、超高強度極短パルス光と孤立固体微小簿膜との相互作用によるプラズマ生成と電子発生・制御、および、生成電子のパルス圧縮を実証する。 本実証のための課題は大きく分けて3つになる。(1)短パルス電子線の発生、(2)短パルス電子の圧縮と評価、(3)電子線回折装置の構築の撮像実証。(1)のためには、電子加速用レーザーパルスの高品位化が必要となる。目標とする100fs以下の電子線パルスを発生するには、レーザーパルス幅が数10fs以下で、かつパルスが裾野成分を有しないものでなければならない(極低強度プリパルス)。プリパルス除去のためにプラズマミラーの導入を検討し、その特性評価実験を実施した。ミラー上でのレーザー強度、ミラーへの入射角度、レーザー偏光に対するプラズマミラーの性能を測定した。その結果、これらの条件を最適化することにより、反射率>70%、プリパルス低減率1/1000が実現できる事を実験的に検証した。また、そのために必要な、プラズマミラー用ガラス基板の減反射コート(反射率0.1%)の実現性も検証した。これらの成果をもとに、高品位、50fsパルスを発生するCPAレーザーシステム設計を完成させた。次年度にこの設計に従い、レーザーシステムの高品位化、高強度化を実施する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高品位化レーザーによる電子発生予備実験の開始を計画していたが、短パルス電子発生のために不可欠なレーザーパルス高品位化を実現しうるプラズマミラー実験において極めて有益なデータが取得されたので、プラズマミラーを導入したレーザーシステム設計を優先し、設計を完成させた。電子発生実験開始まではいたらなかったが、次年度直ぐにレーザーシステムの高品位化、高強度化に着手できるまでに達成した。総合的には順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
レーザーシステム高品位化設計において当初計画より優れた設計を行えたので、その設計に基づくレーザーシステムの再構築を優先する。構築に時間を要するが、高品位パルスにより高品位電子パルスを発生する事を実証できれば、当初計画して野立固体薄膜の使用無しに、次段階に準む事もできる次年度の実験成果を踏まえながら、次々年度の計画を検討する。
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