単一パルス撮像可能な超高速電子線回折装置の設計、製作を実施した。今までの4年間に実施してきた同装置に必要とされる高品位パルス電子源に関する要素研究の成果を踏まえて、設計を行った。高品位パルス電子源とは短パルスと高電子数である。短パルスについては、レーザー生成・加速電子のもつ運動量広がりを利用した位相回転による自己パルス圧縮法が有効であることを検証してきたので、この位相回転自己圧縮法を採用した。レーザー加速直後の電子パルス幅がレーザーパルス幅と同程度になることを実験検証した結果を踏まえて、短パルス化したレーザーシステムを用いた装置設計を行った。電子線源としては、可能性のあるものを全て試行できる装置の設計を行った。具体的には、電子線源として、アルミニウム薄膜、薄膜の表裏ダブルレーザー照射方式、電子発生薄膜と電子集束金属細線の併用方式を用いることができる。 また、観察試料の励起を紫外線短パルスで行えるように、レーザー電子加速用のレーザーからパルスを分岐し、波長変換により330nmのパルスを発生できるように設計した。つまり、我々のレーザー装置からのパルスを、3つに分岐する。(1)観察対象試料光励起用パルス、(2)電子発生用薄膜の予備照射プラズマ化用パルス、(3)電子発生・加速用パルス。以上の設計を踏まえて、装置製作を行った。装置は約1500x900x400の真空容器内に上述の全ての要素を含むものである。これにより金の単結晶の単一パルスにより回折像の撮像に成功した。また、電子散乱自己相関方式で短パルス化にも成功した。 本研究の成果により完成した超高速電子線回折装置を活用して、今後、様々な高速現象の撮像を試みていく。本研究の成果は電子顕微鏡科学分野における今後の時間分解観察に貢献するものである。
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