研究課題/領域番号 |
23226004
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研究種目 |
基盤研究(S)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
山内 和人 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10174575)
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研究分担者 |
松山 智至 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10423196)
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キーワード | X線自由電子レーザー / X線集光 / X線ミラー / X線波面計測 / X線干渉計 / 多層膜ミラー |
研究概要 |
本研究は,次世代X線源「X線自由電子レーザー (XFEL: X-ray free electron laser)」の高度利用に不可欠なXFELのナノ集光技術の確立を目的に,これを実現し得る光学系として,ビーム拡大のための「開口数変換光学系」と,極限集光のための「大開口数集光光学系」からなる多段光学系を構築することを目指している. 本年度は,①XFEL用スペックルフリーミラーの開発,②長尺ミラー用多層膜成膜装置の開発,③シングルショット波面計測法の開発 を実施した. ①では,既存の数値制御EEM装置を用いて,ナノ凹凸の除去を行った楕円ミラーを試作した.干渉計によってその形状を評価したところ,約1nmの精度で作製できていた.また,SPring-8にて反射像のスペックルを観察したところ,スペックル抑制効果を確認した. ②では,XFELのために,500mm長の長尺ミラーに対応させた多層膜成膜装置を開発した.ロードロック室,試料ステージ(ストローク:500mm),3種類のスパッタガン,スリットで構成されている.ミラー光軸方向に多層膜の積層周期を変えるために,ミラーの前面に微小開口板を置き,局所領域ごとの成膜が可能な装置となっており,ミラー長さに相当する500mmの走査が可能である. ③では,XFELのワンショット波面計測を実施するために,X線用の位相格子を用いたシングルグレーチング干渉計を提案し,その実証を行った.SPring-8 1km長尺ビームラインのフルコヒーレント光を用い,あらかじめ形状可変ミラーによって乱された既知の波面を計測することで,本干渉計測の有効性を確認した.実験の結果,λ/12の精度で波面収差を測定することができた.また,感度的にも十分XFELの波面をワンショットで計測可能であった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的を遂行するために,本年度はその基礎技術確立を中心にして研究を進めた.X線ミラー作製,多層膜成膜,波面計測は,XFELのサブナノ集光を実現する上で必要不可欠な基礎技術であり,本年度は計画通りその確立に向けた研究開発を行うことができた.特に本研究で重要となる波面計測において,世界で初めて硬X線ナノビームの波面をλ/12の精度で測定することに成功するなど,研究は順調に進んでいる.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究として,①XFELのサブ50nm集光,②XFELのワンショット波面計測,③XFEL照射による損傷閾値の調査,④長尺ミラーに特化した形状計測システムの開発 をまずは進めていく. ①においては,全反射ミラーを2枚用いることで,XFELをサブ50nmまで集光できる集光システムを開発する.本開発で問題点の抽出を行い,サブ10nm集光システムの開発へフィードバックする.②では,23年度に確立したシングルグレーチング干渉計を用い,XFELナノビームをワンショットで波面計測できるシステムを確立する.③では,XFEL照射によってミラーコーティング材料が損傷しないか調べるために,各種材料にXFELを照射し,損傷の閾値を調査する.これによって,損傷しない長期安定なミラーコーティングを実現する.④では,長尺ミラーを高精度に測定可能な形状計測システムとして,エアスライドと干渉計を備えた新しいシステムを開発する.これによって,高精度な長尺ミラーを作製する. 最終的に,サブ10nm集光のための多段集光光学系を開発し,XFELのサブ10nm集光を実現する.
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