研究課題/領域番号 |
23226004
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
山内 和人 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10174575)
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研究分担者 |
松山 智至 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10423196)
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研究期間 (年度) |
2011-05-31 – 2016-03-31
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キーワード | X線自由電子レーザー / X線集光 / X線ミラー / X線波面計測 / X線干渉計 / 多層膜ミラー |
研究概要 |
本研究は,次世代X線源「X線自由電子レーザー (XFEL: X-ray free electron laser)」の高度利用に不可欠なXFELのナノ集光技術の確立を目的に,これを実現するために,大開口数集光光学系の構築を目指している. 本年度は,①数値制御EEM装置,長尺ミラー用多層膜成膜装置の高度化,②XFELのサブ50nm集光の実現,③XFELナノビームのワンショット波面計測,④XFEL照射による損傷閾値の調査,⑤長尺ミラー用形状計測システムの開発 を中心に研究を進めた. ①では,数値制御EEM装置と長尺ミラー用多層膜成膜装置の各種パラメータの検討を行うことで高度化を図った.成膜装置では,実際に500mm長の集光ミラーの白金コーティングを行い,その表面粗さや膜の均一さを評価したところ,表面粗さ0.2 nm RMS,均一さ1nm以下を実現した.②では,作製した500mm長の楕円ミラー(全反射鏡)を用いてKirkpatrick-Baezミラー光学系を構築し,XFELを55nm×45nm(水平×垂直)まで集光させることに成功した(X線エネルギー:10keV).ただし,垂直方向の回折限界は30nmであり,これは実験ハッチの振動が影響していることが疑われた.③実際の集光プロファイルを評価するために,回折格子を用いたシングルグレーチング干渉計を構築し,XFELワンショットの波面を評価した.計測された波面収差はミラー上に存在する形状誤差とよく一致し,また,これはλ/4以下であったため,振動の影響を排除すれば②の結果はほとんど回折限界で集光できていたことが確認された.④では,白金,石英,シリコン,カーボン等の材料に対してXFELを照射し,アブレーション閾値を決定した.⑤では,平面からのずれ量の大きいsub-10nm集光ミラーの形状測定システムを構築し,その動作確認を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的を遂行するために,本年度は昨年度に引き続きその基礎技術確立を中心にして研究を進めた.XFELのサブ50nm集光は,サブ10nm集光への足掛かりとして重要な実験であり,本年度は計画通りサブ50nmを実現することができた.実験ハッチの振動という予想外の外乱によって直接的なプロファイル計測は困難であったが,昨年度確立したシングルグレーチング干渉計によってワンショット(フェムト秒オーダー)でXFELの波面収差を計測することに成功した.以上のように研究は順調に進んでいる.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究として,①XFELのワンショット波面計測の高度化,自動化,②XFEL照射による損傷閾値の調査,③長尺ミラーに特化した形状計測システムの開発,④高反射率多層膜の実現 を進めていく.①においては,これまでは1次元回折格子を用いていただが,縦横を同時に計測できるように2次元回折格子(チェス盤状回折格子)を用いた波面計測法を確立する.また,一連の波面計測を自動化することで,将来的にユーザーが簡易に利用できる環境を整える.②では,引き続きXFELによるアブレーション閾値を理解するために各種材料へのXFEL照射を行う.特に,多層膜へのアブレーション閾値を決定する実験を行う.③では,新しく開発中の計測装置を完成させ,形状誤差1nmで長尺かつ曲率の大きい楕円ミラーを高精度に測定できるようにする.④では,これまで開発してきた白金カーボン多層膜の反射率向上を目指し,白金に異種材料をドープしその結晶化の阻害を試みる.白金をアモルファル化することで界面が平滑となり反射率が向上するものと予想している. 以上の基礎技術を確立することで,最終的に,4枚のミラーから成る多段集光光学系を構築し,XFELのサブ10nm集光を実現する.
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