研究課題
次世代X線源「X線自由電子レーザー (XFEL: X-ray free electron laser)」の高度利用に不可欠なXFELのナノ集光技術の確立を目的に,これを実現し得る光学系として,ビーム拡大のための「開口数変換光学系」と,極限集光のための「大開口数集光光学系」からなる多段光学系の構築を目指している.本年度は,①X線自由電子レーザー集光装置の開発,②多層膜ミラー開発,③2D位相格子を用いたワンショット波面計測 を中心に行った.①では,ナノ集光を実現するために,高安定性集光装置を構築した.本装置は,2枚のミラーの全自由度に対して高精度にアライメントできるマニピュレータと,ミラー表面の汚染を避けるための真空チャンバーから成るものである.動作確認の結果,特に重要である入射角(ピッチング)において0.5μrad以下の精度を達成するなど,高精度な装置を完成させた.②では,高反射率を達成できる多層膜の研究を進めた.反射率を向上させるためには,多層膜界面の表面粗さの向上が不可欠であり,このために重元素(主に白金)の結晶化の抑制が必要であると考えた.白金層にカーボンを添加することで結晶化の抑制を試みた.X線反射率法(XRR)やX線回折法(XRD),原子間力顕微鏡(AFM)による解析の結果,結晶化の抑制に成功した.また,これによって反射率が向上した.今後も様々な検討を行い反射率向上のための研究を継続する.加えて,SACLAの1μm集光光学系を使って多層膜損傷の閾値を調べた.この研究によって現在開発中の多層膜はSACLAからのX線に十分耐えられることを確認した.③では,2D位相格子を作製しこれを用いてX線自由電子レーザーのワンショット波面計測を試みた.SACLAの50nm集光光学系において,グレーチング干渉計を構築しその結果がミラー形状とよく一致することを確認した.また,1D位相格子の結果と比較し,よい一致を得た.
2: おおむね順調に進展している
これまでの研究開発によって,実験装置の準備や必要な基礎技術(多層膜,波面計測)の確立が進められつつある.また,SACLAの50nm集光光学系を使った実験によって実際に波面計測に関する知見を得ることができている.以上のように研究は順調に進んでいる.
今後の研究として,①XFELのワンショット波面計測の高度化・自動化,②長尺ミラーに特化した形状計測システムの開発,③高反射率多層膜の実現 を進めていく.①においては,波面計測の高精度化に加え,ミラーアライメントを調整するためにも利用することを検討する.また,一連の波面計測を自動化することで,将来的にユーザーが簡易に利用できる環境を整える.②では,新しく開発中の計測装置を完成させ,形状誤差1nmで長尺かつ曲率の大きい楕円ミラーを高精度に測定できるようにする.③では,カーボンドープに加え各種工夫によって反射率が高いグレーディッド多層膜の形成に挑戦する.様々な角度から多層膜を検証し,高精度かつ高反射率な多層膜集光ミラーを完成させる.以上の基礎技術を確立することで,最終的に,4枚のミラーから成る多段集光光学系を構築し,XFELのサブ10nm集光を実現する.
すべて 2014 2013 その他
すべて 雑誌論文 (12件) (うち査読あり 12件、 オープンアクセス 5件、 謝辞記載あり 5件) 学会発表 (27件) (うち招待講演 7件) 備考 (1件)
Optics Express
巻: 21 ページ: 2823-2831
10.1364/OE.21.002823
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research Section A
巻: 710 ページ: 93-97
10.1016/j.nima.2012.11.059
巻: 21 ページ: 9267-9276
10.1364/OE.21.009267
巻: 21 ページ: 15382-15388
10.1364/OE.21.015382
高圧力の科学と技術
巻: 23 ページ: 220-226
Journal of Physics: Conference Series
巻: 463 ページ: 012017
10.1088/1742-6596/463/1/012017
巻: 463 ページ: 012043
10.1088/1742-6596/463/1/012043
Synchrotron Radiation News
巻: 26 ページ: 13-16
10.1080/08940886.2013.832585
Proceedings of SPIE
巻: 8848 ページ: 884804
10.1117/12.2023465
巻: 8848 ページ: 88480S
10.1117/12.2022735
巻: 8848 ページ: 88480T
10.1117/12.2025377
巻: 8851 ページ: 885107
10.1117/12.2023152
http://www-up.prec.eng.osaka-u.ac.jp/