研究課題/領域番号 |
23226004
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
山内 和人 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10174575)
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研究分担者 |
松山 智至 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10423196)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | X線自由電子レーザー / X線集光 / X線ミラー / X線波面計測 / X線干渉計 / 多層膜ミラー |
研究実績の概要 |
次世代X線源「X線自由電子レーザー (XFEL: X-ray free electron laser)」の高度利用に不可欠なXFELのナノ集光技術の確立を目的に,これを実現し得る光学系として,ビーム拡大のための「開口数変換光学系」と,極限集光のための「大開口数集光光学系」からなる多段光学系の構築を目指している. 本年度は,①大開口数多層膜集光ミラー開発,②大開口数集光光学系の開発,③X線自由電子レーザー集光実験 を中心に行った. ①では,設計した楕円ミラーを作製するために,合成石英基板を材料とし,コンピュータ制御EEMを使って決定論的に加工を進めた.基板形状の計測には,開発したスティッチング干渉計と3次元計測機(開発中)を用いた.急峻な非球面形状を持つため,オフライン計測には数nm程度の不確かさが生じていることが予想された.研究計画の段階から想定しており,この修正にはX線を使ったAt-wavelength形状計測を利用する(本年度とH27年度実施).加工後基板は表面粗さの確認ののち,これまでの研究で確立したグレーディッド多層膜を成膜した.XRDや干渉計,断面TEMの計測結果などから,多層膜は十分な精度で作製できたことを確認した. ②では,大開口数集光システムの構築・高度化を進めた.50nm集光システムで得られた知見を基に,高精度・高剛性なシステムを構築した.事前のシミュレーションで得られた許容アライメント精度を達成した. ③では,X線自由電子レーザーを使って,作製した大開口数多層膜集光ミラーのファーストテストを実施した.多層膜の反射率は設計値とほぼ同程度であり,予想通りの性能を有していた.また,開発したグレーチング干渉計を使って,波面計測を行い,ミラー基板に存在する形状誤差を決定することができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究開発において,実験装置の準備や必要な基礎技術の確立がほぼ完成した.また,大開口数多層膜集光ミラーを2枚作製し,その性能テストをSACLA(X線自由電子レーザー施設)にて実施した.以上のように研究は順調に進んでいる.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究として,①グレーチング干渉計の高度化,②補償光学を利用した多層膜集光ミラーの修正,③XFEL集光実験とその応用実験を進めて行く. ①では,グレーチング干渉計の高精度化とシステムエラーの校正を進める.SACLAとSPring-8の両方で同一ミラーを使った実験を行うことで,再現性や確からしさを評価する.②では,グレーチング干渉計の結果を基に,基板形状の誤差を,追加成膜によって修正する.本技術は,25年度と26年度に確立済みである.③修正した多層膜ミラーを使って,高密度光子場形成を実証する.また,様々な非線形現象である可飽和吸収を観測し,本システムの有効性を確認する.
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