研究課題/領域番号 |
23226006
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
光石 衛 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90183110)
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研究分担者 |
藤原 一夫 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (00346438)
鈴木 昌彦 千葉大学, 学内共同利用施設等, 教授 (10312951)
尾崎 敏文 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (40294459)
中島 義和 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40343256)
森田 明夫 日本医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60302725)
杉田 直彦 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70372406)
阿部 信寛 川崎医科大学, 医学部, 教授 (80284115)
原田 香奈子 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (80409672)
岩中 督 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (90193755)
上田 高志 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (90631573)
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研究期間 (年度) |
2011-05-31 – 2016-03-31
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キーワード | ロボティクス / 超微細手術 / 軟組織 / 硬組織 / 血管内 |
研究概要 |
従来の手術では達成できない高度治療を社会に普及させることを目指して,医師の手の動作では実現不可能なスーパー・マイクロ・サージェリ技術を研究した. (1)軟組織対応ロボット:脳外科では,深部狭所での複雑高精度なタスクを対象とした脳外科手術支援システムを提案し,システムに用いる多自由度鉗子を開発した.鉗子は軸径3.5 mmにおいて,屈曲・屈曲先回転・把持の3自由度を実現し,評価実験により各自由度が要求仕様を満たすことを確認した.眼科では,小型化・高精度化と緊急時の対策を含む安全性向上を目的としてマスタ・スレーブ型眼科支援システムを開発した.また,シミュレータを開発し,スレーブ・マニピュレータのパラレルメカニズムの設計製作を行い,評価実験により要求された精度と退避機能を達成したことを確認した.小児外科では,多自由度持針器を用いた操作性評価実験により問題点を抽出し,それ基づいて改良案の提案を行った. (2)硬組織対応ロボット:多軸骨切除ロボットを用いた人工膝関節置換術支援システムの高精度化を目指し,ロボット工具先端動作の並進誤差を1 mm,角度誤差を1 deg以内に抑制するアルゴリズムを提案した.提案手法によって人工膝関節置換術支援ロボットの動作の並進誤差を1 mm以下に抑制可能であり,ロボット動作の精度が向上することが確認された.また,振動を用いることにより,骨切削における切削抵抗および,加工温度を従来のものより減少させる新しい骨切削デバイスの開発を試みた. (3)血管内ロボット:マイクロロボットが対象とする血管内治療の例として,脳動脈瘤を想定し,脳動脈瘤モデルを用いた実験系の構築及び外部磁場制御の研究を行った.脳動脈瘤の血管は直径約2mmであるため,ロボットの大きさは1mm以下となる.脳動脈瘤周辺の3次元血管分岐と血流を再現した実験モデルを設計し,その中でのマイクロロボットの挙動を検討した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
軟組織対応ロボットでは,脳外科において,深部狭所での複雑高精度なタスクを対象とした脳外科手術支援システムを提案し,多自由度鉗子を開発した.眼科では,小型化・高精度化と緊急時の対策を含む安全性向上を目的としてマスタ・スレーブ型眼科支援システムを開発した.硬組織では,多軸骨切除ロボットを用いた人工膝関節置換術支援システムの高精度化を目指し,ロボット工具先端動作の並進誤差を1 mm,角度誤差を1 deg以内に抑制するアルゴリズムを構築した. 以上のように,当初の計画に沿って順調に研究を遂行している.
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今後の研究の推進方策 |
現在までに開発したスーパー・マイクロ・サージェリーの要素技術を高度化する研究を推進し,システムの完成度と汎用性を高める技術だけでなく,臨床応用のためのプロセスも含めた学問体系として整理していく. (1)軟組織:ロボットのインテリジェンスを使ったスーパー・マイクロ・サージェリの精度向上・手術時間短縮・治療成績向上を目指した要素技術の開発を行う.脳外科では,針の刺入位置のみを指定すれば,最小・最速の駆動で自動吻合が可能となるナビゲーション及び制御技術を開発する.眼科では,位置決め精度を高めるため,鉗子の位置と対象の位置を自動で抽出し,自動位置決めを行う制御方法を開発する.小児科では,臓器を適切にハンドリングするため,臓器モデルを搭載する.これらの要素技術は成人一般外科用に開発した実績があり,小児科に適したモデル・制御に改良して搭載する. (2)硬組織:低侵襲性と精密動作を向上させる制御アルゴリズムを構築する.膝関節・股関節では,皮膚を大きく切開し,組織をかき分けて対象部位にアプローチする必要がある.そこで,最小の切開で骨表面にアプローチするための制御・工具軌道生成アルゴリズムとナビゲーションを開発する. (3)血管内:超微細加工装置による微細化,駆動方法の確立を行う.FIB-CVDなどの加工により,数ミクロンのマイクロロボットを製作し,上記実験系での駆動実験を行う.更には,磁場を利用する.磁場でマイクロロボットを駆動できれば画像誘導による治療が可能となり,社会的影響・治療効果が大きい.
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