研究課題/領域番号 |
23226009
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
田部 道晴 静岡大学, 電子工学研究所, 教授 (80262799)
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研究分担者 |
小野 行徳 富山大学, 理工学研究部, 教授 (80374073)
水田 博 北陸先端科学技術大学院大学, マテリアルサイエンス研究科, 教授 (90372458)
品田 賢宏 独立行政法人産業技術総合研究所, ナノエレクトロニクス研究部門, 研究員 (30329099)
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研究期間 (年度) |
2011-05-31 – 2016-03-31
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キーワード | 電子デバイス・機器 / シングルドーパント / シリコン |
研究概要 |
本研究計画は、個々のドーパント原子を利用したトンネル型原子デバイスの開発を目的とするものである。H24年度の主要な成果は以下のとおりである。 1.ドーパント原子MOSFET(田部): リンをドープしたスタブ型チャネルFETで、イオン化エネルギーが大きいリンドナーが存在し、これを介したトンネル電流ピークが100K以上で観測されることを見出した(PRB(2013))。従来の文献では、測定温度がせいぜい20Kどまりであり、この結果は室温動作へ向けた重要な一歩と考えられる。 2.第一原理計算(分担者水田、田部): スタブ型Si中のリン原子の状態密度を詳しく調べ、ドーピング位置が中央からスタブ領域に移動するほどディープレベル化することがわかった(PRB(2013))。実験事実と整合している。 3.ドーパント検出技術(田部): KFMを用いて、横型ナノpnダイオードのポテンシャル分布を測定した。その結果、空乏層領域はドーパントの充放電による電位の揺らぎが見られ、またディープ化ボロンの負帯電も観測された(APL(2013))。 4.フォトン検出デバイス(田部): 極薄SOIを用いた横型ナノpnダイオードのフォトン吸収効果を調べた。pin構造では生じない3レベルRTSが観測され、ボロンとリンの複合体への光励起電子トラップによるものと解釈された(APEX(2012))。 5.シングルドーパントイオン注入法(分担者品田):ドナー(P,As)が1次元に配列したデバイスを作製し、ドナー準位を介する量子輸送特性を観測した(Nature Nano(2012))。 6.近接ドーパントの相互作用と電子状態の解明(分担者小野):低温下における電子スピン共鳴法を用いたドーパント電荷の検出を目的として測定系を立ち上げ、リンおよびヒ素の信号を3Kにて明瞭に観測した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究で扱う項目は、ドーパント原子デバイス、ドーパント高精度導入プロセス、ドーパント位置検出、第一原理計算と多岐にわたっているが、その中で最も中心となる項目は、ドーパント原子トランジスタであり、特にその最終目標である「ドーパント原子トランジスタの室温動作」に向けて、大きな一歩となるリンドナーのディープレベル化とそれに伴う100Kでの動作実証を当初計画よりも早期に得ることができた。このドーパントのディープレベル化は、チャネルの形状・サイズと理論的に関連しており、第一原理計算で得られた結果と、実験結果は整合している。 ナノpn接合についても、I-V特性における光誘起ランダムテレグラフシグナルやKFM電位に共通して見られる個別ドーパントの充放電現象を見出すとともに、特にKFMではボロンのディープレベル化によると思われる電位プロファイルを観測した。これも当初計画を超える成果であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
ドーパント原子MOSFETの研究を今後大きく進展させるために、これまでの準備段階で用いてきたランダム配置のドーピングから一歩踏み出し、チャネル中央部にEBマスクを用いて選択ドーピングを行う。選択ドーピングによって、数個の密集したリンドナー原子をドープし、それを「ディープな」量子井戸として利用することを試みる。現在まで進めてきた個別ドナー原子のディープレベル化量子井戸の利用と比較検討しながら進めていく。この実験に成功すれば、いよいよドーパントのランダム配置から脱した、制御型ドーパント原子トランジスタへと進めることができ、同時に高温化を目指すことができる。
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