研究課題/領域番号 |
23226012
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研究種目 |
基盤研究(S)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
沖 大幹 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (50221148)
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研究分担者 |
荒巻 俊也 東洋大学, 国際地域学部, 教授 (90282673)
大瀧 雅寛 お茶の水女子大学, 大学院人間文化創成科学研究科, 教授 (70272367)
鼎 信次郎 東京工業大学, 大学院理工学研究科, 准教授 (20313108)
田中 賢治 京都大学, 防災研究所, 准教授 (30283625)
仲江川 敏之 気象庁気象研究所, 気象研究部, 主任研究員 (20282600)
花崎 直太 独立行政法人国立環境研究所, 社会環境システム研究領域, 研究員 (50442710)
芳村 圭 東京大学, 大気海洋研究所, 准教授 (50376638)
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キーワード | 統合水循環・水資源モデル / 水資源需給評価 / 水循環・水資源需給情報ベース / 水 / エネルギー / 食料 / 持続可能性 / 気候変動 |
研究概要 |
都市用水のうち,グローバルな工業用水の将来使用量の推計モデルを提案した.各国のGDP推移と水利用効率を考慮することによって,より正確な推計が行えるモデルを構築した.水資源量や経済状態といった各国の状態を示す指標に工業用水需要が依存していることを見出すことができた.また、将来のGDP推移予測値をシナリオ毎に参照することにより,2100年までのグローバルな工業用水使用量分布の予測を行うことができた.生活排水由来の病原負荷の推定に向けては、国別の上下水道普及率あるいは下水処理導入率などのデータの整理を行った。 次に、特に湖沼に着目して衛星観測に基づく土地被覆地図の不確実性の検討を行った。全球湖沼面積は、異なる6種類の地図でほぼ同じ値であった。作成年順では、湖沼の拡大縮小が観測事実と合わない湖沼が多々あることが明らかにされた。 水蒸気同位体比の測定については、東大田無演習林において水蒸気同位体比を直接測ることのできるレーザー分光計を導入し試験を行ったところ、野外での運用においていくつかの問題点が浮上したため、室内実験にて調整・検証を行った。 また、ウズベキスタンの農場において土壌水分量の連続観測を開始し、陸面過程モデルSiBUCを用いた1961年から40年間の水収支を解析では、アラル海の経年的な縮小を精度よく再現することができた.全球については、全球水資源モデルH08の人間活動に関する要素を陸面過程モデルMATSIROに導入した。これにより、自然起源と人間起源の陸域貯水量の変動を解析することが可能になった。地下水については、鉛直一次元地下水モデルを地表面陸面水文モデルに適切に結合し、年平均全球涵養量を推定し、既存値に比べて、湿潤地域において高いものとなった。同位体モデルの開発は順調に進んでおり、Nature誌を含むい くつかの雑誌に論文が掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
都市用水については、水資源量や経済状態といった各国の状態を示す指標との関係を調べ工業用水需要が依存していることを見出すことができており、また、将来のGDP推移予測値をシナリオ毎に参照することにより,2100年までのグローバルな工業用水使用量分布の予測を行うことができている。 さらに、衛星観測に基づく土地被覆地図の不確実性の検討では、地図の作成年順では、湖沼の拡大縮小が観測事実と合わない湖沼が多々あることが明らかにされ、湖沼の衛星観測も順調に進んでいる。 水蒸気同位体比の測定についても、東大田無演習林において実施し水田からの蒸発散フラックスの成分分離を試みられており、概ねスケジュール通りと言える。 また、水循環統合型モデル開発については、アラル海の経年的な縮小を精度よく再現することができたり、全球水資源モデルH08の人間活動に関する要素を陸面過程モデルMATSIROに導入が終わったことで、自然起源と人間起源の陸域貯水量の変動をグローバルに解析することが可能になっている。地下水についても、鉛直一次元地下水モデルを地表面陸面水文モデルに適切に結合しが終わっている。同位体モデルの開発は順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
「モデル高度化・開発の継続と統合化」に関しては、開発してきた統合水循環・水資源モデルH08の水収支部分を先端的な陸面植生水文モデルに差し替え、入念な動作確認を行う。「同位体比による蒸発散過程の分離」に関しては、地上観測で得られた知見やそのモデリング結果をもとに、衛星に搭載した分光分析計によって観測された水蒸気同位体比を利用した、地球全域での蒸散・蒸発の成分分離推定法の開発に取りくむ。「20世紀再現実験及び検証」に関しては、取り揃えた過去の各種統計データ、気象入力データと統合水循環・水資源モデルを用い、過去100年(1901-2000)を対象とした再現シミュレーションを行う。「将来シナリオの作成と将来予測」に関しては、20世紀から21世紀にかけての200年分のオフライン計算が可能となるよう、気象外力データ、土地利用や土地被覆などの境界条件情報を収集、構築する。「グローバルなエネルギーと水の循環および収支推計の国際プロジェクトの推進」に関しては、全球水循環・水資源比較の国際共同研究計画を主導する。「水、エネルギー食料を一体として考えた世界の水持続可能性リスクアセスメント」に関しては、持続的でない地下水の安定的な利用に関する潜在リスクを主要な帯水層に関して情報収集し、リスク分析に資する形で整理する。また、季節単位の需要変動を考慮した都市用水需要モデルを用いて、当該地域の水供給システムの改善や生活水準の向上による水不足への冗長性を考慮した渇水リスクおよび被害のポテンシャルの推定方法を検討する。
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