研究課題/領域番号 |
23226012
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
沖 大幹 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (50221148)
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研究分担者 |
仲江川 敏之 気象庁気象研究所, 気候研究部, 主任研究官 (20282600)
鼎 信次郎 東京工業大学, 大学院理工学研究科(工学系), 教授 (20313108)
田中 賢治 京都大学, 防災研究所, 准教授 (30283625)
芳村 圭 東京大学, 大気海洋研究所, 准教授 (50376638)
花崎 直太 独立行政法人国立環境研究所, 地球環境研究センター, 主任研究員 (50442710)
大瀧 雅寛 お茶の水女子大学, 大学院人間文化創成科学研究科, 教授 (70272367)
荒巻 俊也 東洋大学, 国際地域学部, 教授 (90282673)
山崎 大 独立行政法人海洋研究開発機構, 統合的気候変動予測研究分野, 研究員 (70736040)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 水文学 / 統合型水循環・水資源モデル / 持続可能性 / リスクアセスメント |
研究実績の概要 |
統合水循環・水資源モデルについては、モデルを改良することにより、必要な主要4作物について仮想水原単位の1986-2005年までの連続データを開発し、その変動原因について解析した。全球河川モデルにおいてデルタ地帯の複雑な流れを表現する河道分岐スキームを開発・実装した。また、局所慣性方程式の導入による洪水計算を高速化し、国際比較実験などの大規模計算への準備を進めた。これと並行し、衛星観測植生指標を用いて、高解像度の全球農事歴データセットを作成した。さらに灌漑地における現地観測を活用しアラル海集水域の陸域水循環モデルを構築した。ストック型水資源モデルを用いて、アジア高山地域の氷河融解量の将来変化を明らかにし、氷河融解の気候変化に対する応答を整理した。また、統合水循環・水資源モデルを用いて氷河融解が下流の水資源に及ぼす影響を定量化した。世界の主要研究グループを先導し、第3次全球土壌水分プロジェクトを開始した。水系感染症のリスク評価のために、広範な水インフラに関わる情報を再整理し水系感染症の死亡率との関係を分析した。その結果、水供給システムだけでなく衛生施設も重要な因子となっていることがわかった。蒸発散過程の分離については、前年度できなかった田植え前後の水蒸気同位体比観測を成功させ、生育期間を通じたデータが得られた。その結果、田植え直後は蒸散の寄与率FTは0%に近いが、稲の生育と共に急上昇し、その関係はFT=0.67*LAI**0.25で近似できることがわかった。また、水蒸気同位体比で大気場を拘束させるデータ同化のテスト実験についての論文を発表した(Yoshimuraet al., 2014)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
統合水循環・水資源モデルについては、主要4作物について仮想水原単 位の20年分のデータを開発できた。分担執筆中の英文の教科書でその内容を紹介 しているほか、結果の一部を利用した共同研究が展開し、米国科学アカデミー 紀要に2編の共著論文を発表することができたなど(Dalin et al., 2014; Dalin et al., 2015)、当初計画以上の成果が得られた。全球河川モデルでの河川デルタ流の表現は世界初の快挙であり、学術誌や学会での成果発表に加えて、2014年度内に国内外19の研究機関からモデルの提供要請を受けるなど国際的に非常に高い評価を得た。ストック型水資源モデルについては、統合水循環・水資源モデルに適切に結合が進んでいる。世界の主要研究グループを先導し、第3次全球土壌水分プロジェクトを開始した。水系感染症のリスクに関する分析を順調に進めており、水供給や衛生設備の 普及との関連性など重要な成果がでており、一般化したモデルの構築にむけての 作業を順調に進めている。蒸発散過程の分離については、水蒸気同位体比観測を2期連続で行い、質の高いデータが得られた。
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今後の研究の推進方策 |
仮想水原単位の計算にあたっては、作物収量は観測・統計データを用いた。モデル計算によって作物収量を見積もれるようにするのが今後の課題である。河道分岐スキームを導入した全球河川モデルを用いて、デルタ地域における洪水リスク推定研究を進める。また湖沼プロセスなど陸面モデル・水受給モデルとの結合に必要な河川モデルの要素を追加開発する。湖沼モデルについては、更なるデータ収集を継続すると共に、収集した湖沼モデルへの境界条件データセットを用いて湖沼モデルを動かし、水位や湖沼表面温度の再現性を調査したい。ストック型水資源モデルについては、これまで開発してきた地下水モデルに加え、放射とデブリ分布などを導入した全球氷河長期シミュレーションに注力し、全球ストック型水資源のモデル化手法を飛躍的に発展させる。第3次全球土壌水分プロジェクトによって構築された情報ベースを世界に公開するとともに、第6次気候モデル相互比較プロジェクトとの連携のための枠組みを構築する。水系感染症のリスクでは、これまでの解析結果を用いて、生活排水由来の水系感染症のリスクなどの環境負荷の推定モデルの開発を進め、将来のリスクの変化をマクロに推定する。蒸発散過程の分離については、蒸散寄与率の年々変動を解明すべく、3期目の水田同位体観測を行う。また、データ同化研究についても全球同位体モデルのほか、領域同位体モデルを利用するなど、局所的かつ詳細な観測情報をより有効に扱える手法を開発してゆく。
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