研究概要 |
2つ以上の物質からなるナノ複合・ヘテロエピタキシャル薄膜はまったく新しい機能性材料を生み出す可能性がある。例えばゼロ抵抗超伝導電流の上限を極限にまで高めた高性能超伝導薄膜,磁性相と強誘電体相を同一膜中に共存・制御するマルチフェロイック薄膜,変換効率を飛躍的に高めた量子ドット型太陽電池薄膜など多くの有望なターゲットがある。この技術は異なる物質相や秩序相,異種結晶界面や局所ひずみ,結晶構造や電子状態の急峻な変化・パターン,等々をエピ膜中に作り出し,相固有の特徴的長さ・量子効果と物質との最適な相互作用を引き出すことを可能とする。本研究では,ナノ複合・ヘテロエピタキシャル薄膜技術を発展させ,超伝導電流の上限を理論限界近傍にまで高めるための道筋を明らかにするとともに,得られた知見の様々な機能性材料への展開を目指している。平成23年度は,酸化物高温超伝導体REBa2Cu3Ox(RE=Y,Sm)薄膜中にBaSnO3やBaHfO3などを添加することでナノロッドを形成し,これらを用いることで量子化磁束を強力にピン止めして超伝導臨界電流を向上させる研究を進めてきた。この過程で,薄膜中でのナノロッドの分散状態と不可逆磁場との関係,磁場中での臨界電流密度特性との関係を明らかにしてきた。また,3次元の時間依存ギンツブルグランダウ(TDGL)方程式を用いた理論シミュレーションを構築し,この手法によって量子化磁束がピン止めからはずれていくデピンニング過程の可視化にも成功した。今後,実験と理論シミュレーションを併用して,より定量的なピン止め機構の解明を目指している。このような取り組みは過去になされておらず,今後の大きな発展が期待できる分野である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで培ってきた薄膜技術をベースとして従来にないナノ構造の形成を順次行ってきた。現在までのところ得られている結果は合理的な結果であり,モデリングによる実験結果の理解も可能と考えている。またTDGLを用いた計算手法に進展があり,実験結果の解析や予測に利用できる可能性がでてきており,オリジナルな結果につながるものと期待している。
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