研究課題/領域番号 |
23226015
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
佐々木 一成 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 主幹教授 (80322296)
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研究分担者 |
伊藤 衡平 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10283491)
北原 辰巳 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50234266)
谷口 俊輔 九州大学, 水素エネルギー国際研究センター, 特任教授 (60590065)
白鳥 祐介 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00420597)
中島 裕典 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70432862)
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研究期間 (年度) |
2011-05-31 – 2016-03-31
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キーワード | 燃料電池 / 電極触媒 / 電気化学 / 酸素還元 / SnO2 / 導電性酸化物 / 耐久性 / Pt |
研究概要 |
計画どおり、耐久性と触媒活性を両立した革新的な電極触媒の創製に成功し、燃料電池自動車の寿命に相当する6万回の高電位サイクル耐久性を電池セルで実証することにも成功している。熱力学的安定性と溶出の速度論については、特に、ICP分析で、高電位サイクル後のPtおよびMoO3, SnO2, Nb2O5, Ta2O5, TiO2, WO3からの溶出量を定量的に明らかにした。電極触媒設計と材料プロセシング工学に関しては、NbドープSnO2に着目し、白金触媒の電気化学表面積と酸素還元活性(表面積当たりと白金重量あたりの活性)を詳細に評価した。その結果、担体酸化物表面積と白金原料の不純物の重要性が明らかになった。他方、酸素還元活性は担体の導電率に左右されることが明らかになった。電極触媒の電子・イオン伝導性と界面特性に関しては、特に、ナノサイズ効果を調べるために、尿素をアンモニア源に使う均一沈殿法を使うことで、表面積が170m2/g程度で結晶化された超高表面積SnO2の調製に成功した。これらを踏まえて、電池セルを作製し、燃料電池自動車の寿命に相当する6万サイクル(1.0~1.5V)の耐久試験を行った結果、初期のセル電圧の9割以上が保持され、無視できるほど低い劣化率を示すことが明らかになった。その際に、気相成長炭素ナノ繊維などの導電補助材添加が有効であることを実証することができた。電池セルでの高耐久性の報告は世界でも例を見ない成果である。また、関連して、開発中の酸化物担体持電極触媒用のガス拡散層(GDL)とマイクロポーラス層(MPL)、親水・撥水複合MPL付き拡散層、ハイブリッド流路を有するセパレーター流路、燃料電池内3次元温度分布計測手法を開発し、水電解や水素センサーへの応用の研究が進んでいる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
車の寿命に相当する6万サイクル耐久性を電池セルでも実証することができ、実用化に向けた大きな一歩を踏み出すことができた。また触媒活性が課題であったが、表面活性(白金表面積当たりの触媒活性)と質量活性(白金質量あたりの触媒活性)については、以前は標準水素電極基準で0.8V程度にならないとそれなりの活性が出なかったが、標準的な0.9Vでの活性のデータを出すことが可能になり、既存のPt/C電極触媒と同程度かそれ以上の触媒活性が得られるようになってきた。耐久性が圧倒的に優れていても高い触媒活性が示せないと実用化は難しいが、その大きな壁を超えることができたことは大きな成果である。さらに、特許出願とアウトリーチ活動にも積極的に取り組んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定に沿って研究開発が進められ、計画以上の成果も出てきているので、最終目標を達成するために研究をさらに重点加速して、本プロジェクトを推進する。まず、熱力学的安定性と溶出の速度論については、酸化物のPEFCの作動環境下での溶出性を高温Pourbaix図の形でまとめ、さらに厳しい作動条件下での燃料電池電極触媒用酸化物の安定性もデータべース化する。電極触媒設計と材料プロセシング工学に関しては、白金系触媒の設計も含めて、高活性化の限界にチャレンジして、世界最高レベルの電極触媒活性が出せるように最大限努力する。数ナノレベルで担体と触媒微粒子のナノ複合体が作れるようになったので、この“界面が支配的な金属/酸化物複合体”の微細構造や触媒活性を評価しながら、界面特性を明らかにしていく。ガス拡散層とマイクロポーラス層の設計制御を含めた水管理と熱管理、さらには実システムでの可視化観察による、システムでの挙動を踏まえた触媒設計と電池設計につなげる。本材料が他に類を見ない優位性を有する水電解と水素センサーへの応用に重点化して取り組み、実機での実証や実用化を視野に入れた性能評価等を行う。
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