研究課題/領域番号 |
23226015
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
佐々木 一成 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 主幹教授 (80322296)
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研究分担者 |
伊藤 衡平 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10283491)
北原 辰巳 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50234266)
谷口 俊輔 九州大学, 水素エネルギー国際研究センター, 特任教授 (60590065)
中島 裕典 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70432862)
林 灯 九州大学, 水素エネルギー国際研究センター, 准教授 (60443214)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 燃料電池 / 電極触媒 / 電気化学 / 酸素還元 / SnO2 / 導電性酸化物 / 耐久性 / Pt |
研究実績の概要 |
燃料電池電極触媒の作製条件を最適化し、導電補助材を含む、Pt/ Sn0.98Nb0.02O2 +VGCF20wt%+Nafion13wt%の電極触媒で、高い触媒活性と高い発電性能を実証できた。これら全ての条件下で高活性であるMEAを用いて、起動停止加速耐久試験を行った結果、触媒Pt/ Sn0.98Nb0.02O2 +VGCFにおいて、電流密度200mA/cm2での初期セル電圧を100%とした場合の電圧保持率は、60,000サイクルにおいて約93.3%に達し、本触媒は電位サイクルがかかる実作動条件下で高い発電性能を保持することを実証できた。
以上の結果から、本研究において、SnO2系担体を用いてMEAの高性能と高耐久性を同時に実証することができたと言える。特に電流密度1.0A/cm2において、カーボン担体使用時と同等のセル電圧0.545Vという高いセル性能を達成することができたことは大きな成果であった。
さらに、導電補助材の種類を変えることでの性能向上、SnO2以外の担体材料系との比較評価も行った。また、システム研究や関連する水電解に関する研究も成果が出てきている。さらに微細構造を集束イオンビーム加工観察法(FIB-SEM)で、3次元で定量的に観察解析することを可能にした。これらの成果をもとに、材料設計指針を構築するめどが立った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
世界最高レベルの高電位サイクル耐久性を燃料電池セルで実証することができ、実験研究を担当する院生が、メインの国際会議での優秀発表賞を受賞するなど、国際的にも高く評価された。また、燃料電池・水素エネルギー分野の第一人者として、NHK「サイエンスZERO」、「週刊ニュース深読み」、「TVシンポジウム」、TBS「夢の扉+」などに出演するなど、社会一般の評価も高まった。
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今後の研究の推進方策 |
(1)電極触媒設計と材料プロセシング工学:新規担体材料を用いた電極触媒材料創製とナノ構造制御:NbドープSnO2などの現時点で最も優れた性能と耐久性を示す担体材料を出発材料に、世界最高レベルの酸素還元活性を実証する。特に、導電補助材、導電性酸化物、触媒微粒子をナノレベルで設計制御することで更なるか活性向上にチャレンジする。 (2)電極触媒の電子・イオン伝導性と界面特性(電子・イオン伝導率と欠陥化学解明、金属/半導体接合体の界面特性評価):Pt金属/SnO2半導体結合体の電気化学特性や電子物性、結晶構造などを詳細評価する。特に、金属/半導体の界面物性と電気化学活性・触媒活性の相関を明らかにする。 (3)燃料電池設計工学:高耐久性燃料電池の試作・開発と実作動条件下での実証:①最適化したPt/ドープSnO2電極触媒層について、最適ガス拡散層(GDL・MPL)開発と親水性・撥水性も含めた物質・熱輸送挙動の可視化評価を行い、最適物質・熱輸送マネジメント指針を構築する。②新規無機系・有機系電解質材料の適用可能性を検討する。具体的には、高温作動PEFC・低温作動SOFCの中間領域用の高耐久性電極について検討する。③材料・プロセス最適化による実用電池セルを開発する。特に、既存のPt/Cと同等(以上)の性能、燃料電池自動車等に必要な耐久性目標を達成する。 (4)電気化学デバイス工学:関連する電気化学デバイスへの新規電極触媒の応用:昨今の再生可能電力の接続保留問題に大きく貢献する水電解セルへの応用など、高耐久性電極触媒の用途を幅広く検討する。
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